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復興水産販路回復アドバイザーに聞く

復興水産販路回復アドバイザーインタビュー第5回「1964年の東京オリンピックから市場を見てきたからわかる『今起こっていること』」

被災企業に対し、商品開発や販路開拓につながるさまざまなアドバイスをする、復興水産販路回復アドバイザー。それぞれ専門分野を持つ皆さんへのインタビューを通じ、被災企業が一日も早く復興を遂げるために必要な情報をお届けします。今回は、大手百貨店での食品担当歴45年、現在はフードアドバイザーとして活躍される丸山憲徳さんにお話を聞きました。

丸山 憲徳氏

丸山 憲徳 氏

■プロフィール
丸山 憲徳(まるやま・かずのり)
1964年に株式会社大丸に入社。食品部門でマーケティング・店舗・商品開発・運営・販売促進などを担当。2004年より大丸松坂屋百貨店参事(食品リニューアル・新店リーシング担当)。2010年より株式会社柿安本店執行役員・販売促進統括部長。2014年より株式会社福屋・食品アドバイザー。現在はフリーランスのフードアドバイザーとして、企業の販路開拓、6次産業化を支援している。2018年より復興水産販路回復アドバイザー。

■ いくらおいしくても、便利さがなければ売れない

――丸山さんは大丸に入社したのは昭和39(1964)年。ちょうど最初の東京オリンピックがあった年ですね。
丸山さん:そうですね。当時、大丸の東京店は5階建てで、新人の私はそこから街の五輪のマークを見ていました。私はその頃から食品一筋で、鮮魚、精肉、野菜、惣菜、菓子、レストラン、ギフト関係、何でもやりました。売り場だけでなく、仕入れを担当することもありました。バイヤー制になるまでは、百貨店のマネジャーが仕入れもしていたんです。各店舗のリニューアルにも携わりました。
――現在のお仕事と、復興水産販路回復アドバイザーとしての活動内容についてお聞かせください。
丸山さん:百貨店での経験を活かして、現在はフードアドバイザーをしています。6次産業化の視点から商品の企画やブランディングのアドバイスをしており、復興水産販路回復アドバイザーとしても同様の活動をしています。被災地にもたびたび足を運んでいます。なぜ今、6次産業化が必要なのかというと、モノを作っただけでは売れない時代だからです。これまで水産加工会社は、いいものを作れば売れていましたが、今は作る段階から誰に売るのか、ターゲットを定めないといけません。苦戦している水産加工会社は、誰に食べてもらいたいか、ターゲットが定まっていないケースが多いように思います。年齢によって油っこいものが好き、さっぱりとしたものが好きといった違いがあり、それだけでも作るべきものが変わってきます。また、朝食、昼食、夕食、夜食、間食のうちいつ食べるのかも明確に定義しておくべきです。
――どのようにしてターゲットを決めていけばいいのでしょうか?
丸山さん:ターゲットを決めるには、まずはマーケットを知ることです。ライフスタイルの変化には、常に注目しておく必要があります。たとえば今、都会の人たちは料理をしなくなっています。切って出すだけのかまぼこですら、板にのった商品は売れなくなっています。代わりに売れているのは、小型の揚げ物商品です。包丁などを使わなくても、袋をあけてすぐに食べられる商品が人気で、かまぼこメーカーも揚げ物にシフトしているくらいです。百貨店ではかつて棒ダラが飛ぶように売れていましたが、これも水に浸して戻すのに時間と手間がかかるので売れなくなってしまいました。今は手間をかけずに、すぐに食べられるものが好まれる時代です。
――消費者はおいしいだけでなく、便利な商品を求めているということですね。
丸山さん:便利さとしては容器も重要です。マーケットに合わせた形状にしないといけません。たとえばマヨネーズは、昔は瓶に入れて売られていましたが、今は便利なチューブの容器が主流ですよね。使いやすいものがマーケットで生き残ったのです。伝統があるのはいいことですが、だからといって止まってはいけません。自動車だって、いくら売れているものでも数年おきにモデルチェンジしていますよね。それと同じように、水産加工品も常にモデルチェンジしていく必要があるのです。また、各家庭では、ゴミの分別や生ゴミの処理といったことも手間となります。工場で魚の骨を取り除いて、カットした状態で出荷すれば、家庭でのゴミは減ります。食べられない部分を生産側で粉末に処理すれば、家庭なら廃棄になる部分も出汁や餌料になります。

■ パン食から米食へのシフトも工夫次第でチャンスになる

――昨今、「魚があまり食べられなくなった」とも言われています。この現状をどう克服していけばいいでしょう?
丸山さん:みんな魚が嫌いなわけではありません。作り方次第で売れると思います。注目すべきは消費者の嗜好の変化です。私たち日本人も、米食からパン食にシフトしていますよね。またインバウンドで、パンを主食とする海外の人たちも多く訪れています。そういった中で、「ご飯と一緒に食べる」という発想から脱却することが大切です。「鮭ほぐし(鮭フレーク)」といえばおむすびや混ぜご飯が定番ですが、洋食として出してみたらどうでしょう。たとえばイタリアン料理には、ピザ、パスタ、サラダなど、どれにも魚が入っていますよね。今の日本は洋食化しておりイタリアの食文化に似てきているため、参考になることは多いと思います。
――新商品開発のヒントはどういったところで得られますか?
丸山さん:人に会って、会話を交わすことでいろいろなことがわかります。私は普段、若い女性が行くようなお店にも足を運ぶようにしています。最近は都内の居酒屋にも女性客が増えたことで、昔とはお店に置かれている酒の種類も変わりました。私が若かった頃は、芋焼酎も匂いがきつくて、飲んだ日は体じゅう芋の匂いがしたものです(笑)。ワインの消費量が増えて、それと合うチーズなんかも増えましたね。メニューは常に変化しているし、みんなで一つの料理をシェアするなど食べ方も変わっています。その中に入っていくには現場に足を運んで、多くの人の声に耳を傾けないといけません。
――何かがあるのを待っているのではなく、自分からアクションを起こすことが大切なんですね。
丸山さん:お客さんのことを知って、はじめて商品開発が進みます。たとえば今、体験することの価値が上がっています。観光などでただそこに行くだけでなく、自分たちも何かを体験したいという人が増えているのです。水産業でいえば、千葉県には地引網体験ができる場所もありますが、水産加工会社が魚をさばく体験なんかを企画して、参加者に自分でさばいた魚を食べてもらうのもいいでしょう。また、私は地方に行くと小さな居酒屋に入って、地元の食材がどう使われているかもよく見ていますが、被災地では思ったほど地元のものが使われていません。製造業者から飲食店に、食材を使ってもらう提案をする余地はまだまだあるように感じます。
――百貨店の催事などで商品を売る秘訣を教えてください。
丸山さん:今は百貨店などの催事コーナーに出店しても、売るのはなかなか難しくなっています。昔のようなシャワー効果もなく、お客さんは必要なものだけ買って帰ってしまう。交通費などの費用負担もシビアな問題で、昔のような百貨店側からの支援もありません。それでももし、そういった機会があったなら、声をかけるより試食ができるようにしたほうがいいでしょうね。ここでも「食べる」という体験をしてもらうことが重要です。
――最後に、東北の被災企業へのメッセージをお願いします。
丸山さん:消費者は魚が嫌いになったわけではありません。ただ、ちょっと手間がかかるのが面倒だと思っています。マーケット人口の多い都会の人たちが、どんな食べ方をしているかという視点で商品を作ることが大切です。今は百貨店のお歳暮商品でも、生魚はあまり好まれず、調理済みのものが売れています。では誰がその調理をするのか。百貨店やスーパーも、今は人手不足でなかなかその余裕がありません。これは加工会社にとってはチャンスです。便利であれば魚を食べたい人はたくさんいるので、ぜひ新商品の開発にチャレンジしてもらいたいですね。
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