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セミナーレポート

セミナーレポート東日本大震災被災地域の水産加工品を海外に売り込め!
販路回復・開拓パネルディスカッション 開催報告

平成30年12月4日、ホテルメトロポリタン仙台にて「販路回復・開拓パネルディスカッション」が開催されました。東日本大震災によって販路を絶たれた東北被災地域の水産加工品等を「“三陸ブランド”として海外に売り込むには?」、「訪日観光客市場に向けた商品開発とは?」といったテーマで、新たなビジネスチャンス創出への意見交換がなされました。その概要をご紹介します。

まず、主催者を代表して東北六県商工会議所連合会の会長であり、仙台商工会議所会頭の鎌田宏氏より、「広域連携で取り組む事業が、さらに東北復興への弾みとなることを祈念する」というご挨拶があり、その後に2つの講演が行われました。

最初に水産庁漁政部加工流通課課長補佐 生駒潔氏より「水産加工業復興に向けた現状と課題や今後の展望について」、続いて経済産業省東北経済産業局局長 相樂希美氏より「三陸地域の水産加工業等振興に向けた取り組みについて」の報告がありました。

生駒氏は、東北被災地の復興状況や支援対応について説明され、「今後、消費者のニーズに合った水産物が供給されて、所得の向上につながるような施策を考えていきたい。外国に輸出するにあたっては、トレーサビリティの取り組みを推進したい」と話されました。

相樂氏は、東北被災地の復興状況・課題について、グループ化補助金採択者のアンケートを元にした説明や三陸地域水産加工業等振興推進協議会の活動紹介を行い、「広域的な連携による海外展開等の取り組みは、沿岸被災地域の早期復興と三陸ブランド価値の向上とともに、次世代に向けた地域の繁栄にもつながっていくものと確信します」と述べました。

パネリスト
株式会社元気いしのまき
代表取締役副社長 松本 俊彦 氏

■ 商品開発は周囲の意見に耳を傾けることが大切

本業は印刷業ですが、東日本大震災で工場が全壊しました。同様に周囲の水産加工会社もほぼ全壊という状況でしたので、30社ほどで集まり、そのうちの25社で一般社団法人石巻元気復興センターを立ち上げました。
以降、時間が経過して復興需要も少なくなってくる時期に開発したのが、ハラルのノンポーク、ノンアルコール商品です。2年がかりで11社15商品を開発しましたが、現在はハラル認証取得に向けてがんばっているところです。

輸出については、実績をつくっている企業もあります。我々の仲間の企業が、香港のある企業と取引をしておりまして、その企業を足がかりさせていただき、香港において企業訪問を行うことで、若干ではありますが、成果を上げました。
しかし、信頼関係がないと、知らないうちに商材を取られてしまうことにもなりかねませんので、そこは注意が必要です。販路開拓は、海外でも国内と同じように、慎重に、地道に行わなわなければならないということだと思います。
これまで、「三陸ブランド」を知ってもらうために、海外において実演販売や試食販売を行ってきました。食べてもらえればおいしい、すばらしい商品であることはご納得いただけると思います。しかし、それをどうPRするのか。それが大きな課題だと思います。

また、現在、私達は、「ハラル商品」の開発を行っておりますが、復興需要が落ち着いてきた今こそ、いよいよ、私たちの「ハラル商品」の出番ではないかと思っています。
石巻の「ハラル商品」は、日本的なハラル商品ですので、その点をPRしていきたいと考えているところです。
パッケージは皆で考え、日本人向けではなく、イスラム系の方が好みそうな色あいやデザインにしようと一生懸命考えました。周囲の意見も聞きました。自分たちの商品をつくろうとするとき、いろいろな人の意見を取り入れてきちんと考えること、そして、それを一つひとつ丁寧にカタチにしていく過程は必須です。
ただし、これにはお金も時間もかかるので、被災したメーカーがチャレンジするには大変な勇気が必要です。これまで通り、行政のご支援をいただきたいと思っていますので、今後ともよろしくお願いします。

パネリスト
ピーアールウィン株式会社
代表取締役社長 二見 弘美 氏

■ヒットのカギは「感動」と「話題性」

2004年に日本の安全・安心に対応する品質の包装資材を中国でつくろうと上海にまいりました。ここ数年、「日本人なんだから、日本のものを持ってきて」と言われることが急激に増えました。そんな中国では、日本食ブームが巻き起こっていて、高級日本食のお店や居酒屋が増えて、弊社では、お寿司の容器に注文が殺到しています。
3、4年前、沖縄の久米島からお水を買いまして、中国で販売しようとしたとき、よく調べてみますと、すでに70以上の水が中国にあり、自分がやり出したときには北海道の水までありました。
しかし、関税や物流費がかかるため、どうしても日本のものは海外で値段が高くなってしまいます。そこをどう調整していくのかが課題で、一つの方法としては、我々のような現地にいるものが、なるべく中間業者を通さずに日本の卸から買わせてもらうことが考えられます。
また、もう一つの方法としては、「海外向けの新ブランド」という位置づけで商品をつくっていただくやり方が考えられます。価格の問題は、このような方法で乗り切るしかないのではないかと思っています。

では、三陸の何が中国や東南アジアで好まれそうかということですが、中国は今、特に高級志向になってきています。ですから、中国から日本に来た観光客は、せっかくだから良いもの、価値のあるものを買いたいと高額な商品を買い求めます。では、三陸のぜいたくなもの、価値のあるものとは何でしょうか。ウニやアワビということになるのでしょうか。
中国人のネットワークは、ものすごいものがあります。昨日の出来事も、今日にはSNSを通じて皆が知っているといっても過言ではありません。
「明日には何億もの人が知っている」ということになるので、大ヒット商品が出るはずなのです。それは「話題になるもの」、「感動するもの」ではないかと私は思います。
また、日本来て、買物がしたいと思っている中国人は、日本の商品に「安心できるものである」という価値を見いだしています。ですから、せめて英語でも結構ですので、その信頼を裏づけるための商品に関する表示や説明書きがほしいです。

日本の商品の価格が、海外では2倍、3倍になるのは当然のことです。それでも中国を含む海外で「定番商品」といわれるようになるには、きちんと商品開発をする必要があるのではないかと思います。中国は人がとても多いので、ものがたくさん売れています。しかし、大金を出してでも、自分がほしいと思うものを手に入れようとする時代は、そろそろ終盤にさしかかっていますので、急いで売ってください。

パネリスト
株式会社MATCHA
インバウンド戦略部 統括マネージャー カオ 氏

■「思い込み」を疑ってみましょう

前職で海外輸出コンサルタントをしていたときに、ある日本の企業から、自社の自信作が海外で売れるかどうかを知りたいという相談がありました。タイで試したいということでしたので、お客さまをお連れして、一緒に市場調査を行ったことがあります。結果的に、その自信作はタイでは需要がないことが分かりましたが、日本ではあまり需要のない商品がある企業の目にとまり、採用されました。
このような結果から分かるように、「この商品は、売れないだろう」という日本人の「思い込み」があり、輸出先の需要とマッチしていない商品の提案をしているのでしょうか。そこが課題であるとも思います。

また、外国人は三陸の商品に何を求めるのかということですが、そもそも、多くの外国人は三陸を知りません。
例えば、皆さんがイタリアに行って、「シシリアのオリーブオイルが一番おいしいから買ってください」と言われたら、「シシリアってどこ?」となるでしょう。それと同じです。
ここで非常に大切なのは、イタリアに行って食べておいしかったから、これを持ち帰りたいと感じた体験に、情報を与えるということだと思います。
実際に良くあるのは、弊社で配信した情報をもとに海外を訪れ、その記事通り、商品や体験が本当に良かったら、そのことを記事にして皆様にシェアしてくれるのです。
ですから、三陸でも、外国に行くまでもなく、来られた外国人にたくさん試してもらって、どのような反応をしているのか、どういうものに感動するのか、魚だったら北海道の魚と何が違うのかといったことをいかに体験できるかが、外国人のニーズではないかと思います。

販路展開に向けた商品開発に必要なことは、恐らく2つ。
インバウンドは、日本を体験したいので、あえて外国人に向けて変えなくても良いということ。追加で行うとすると、食品の成分などはきちんと見える化する。食べ歩きに向く形にする。大量には持ち歩きが出来ないので、お試しサイズにするなどと言ったちょっとした工夫をしてあげれば良いと思います。
輸出に関しては、相手の国の食文化に合うように、商品開発だけでなく、市場リサーチ、旅行している段階でどういうものを食べているのかといったデータもあると非常に良いと思います。

パネリスト
株式会社ケングローバル
代表取締役 岡部 健太郎 氏

■ 大切なのは自分で現地調査を行うこと

販路開拓のコンサルを10年前から行っています。その経験から申しますと、こちらが売りたいと思う商品よりも、海外の方が買いたいと思う商品が売れます。では、海外で売れる商品をどうやって見つけるのか。それは、海外の人の好みを徹底的に研究するしかありません。
過去30年間の年別輸出実績の統計にもありますように、単価は高くなっていますが、数量は伸びていません。その原因の一つは、日本から輸入されたものを買い求めるのが、海外にいらっしゃる日本人、あるいは日本の食を愛している現地の方に限定されているからであると考えられます。このことからも、日本食に馴染みのない現地の人をターゲットにするしかないともいえる状況です。

また、ご自分で現地に行き、どんなものが売れているのか、レストランにはどんなメニューがあるのか、その原料は日本から来ているのか、周辺諸国から調達しているのか、ご自分の目で見て、実際に味わって調べていただきたいです。
それが最も効果的な市場調査だと思います。そして、レストランは販売先として魅力的です。

私がご一緒させていただいて上手くいっている例をご紹介しますと、その方はご自身でレストランを個別に訪問し、商品説明をしました。説明するだけでは相手の心に響かないので、一緒に食事をしつつメニューの話などをしながら、「うちの商品を使うとこんなにおいしい料理ができる」、「日本では有名なホテルや料亭で使われている」という話をしたところ、採用していただいたという例もあります。

商品開発というものは、全く新しい商品を開発するのも大切ですが、水産物であっても農産物であっても、季節変動に関わらず、年間を通して安定した品質と価格で供給できるものを提案することが非常に大切です。
それからタイにある日本レストランのシェフがおっしゃっていましたが、1日平均10組が日本からセールスに来てサンプルを置いていくので、その数が年間4,000品くらいになるそうです。
その方は全て食べるそうなのですが、レストランでは1回に5個くらいしか使わないのに、50個くらい入ったケースで提案されてしまう場合があるそうです。5個使うために、全て解凍したら他はどうなるのかと。だから個々のレストランが1日、1週間でどれくらい使うのか、それにあったようなパッケージで考えてほしいとおっしゃっていましたので、そういった点にも気を配る必要があると思います。

株式会社電通
ビジネスD&A局 グロース事業開発部 ディレクター
金井 毅 氏

■「体験」と「コト消費」に注目

三陸は風光明媚で海がきれいです。こんなにきれいな海で獲れる魚はおいしいに決まっています。しかし、そのことも含めて、三陸の海が世界3大漁場の1つであることは、日本人も知らない人が多く、海外ではなおさらです。三陸の良さをもっと発信して、三陸ブランドを高めていくべきだと思っています。
今日は海外向けの話ですが、基本的に販路開拓で行うべきことは国内も国外も同じではないかと思っています。まず、ポイントは全世界的に「コト消費」が主流であるということです。
おいしいと伝えるだけでなく、使い方やつくり方、ストーリーを伝えることで、モノが売れる可能性は格段に高くなります。特に、海外はSNSによって情報が拡散されますが、このSNSにのせるのに共感してもらえるストーリーが必要です。このストーリーと共に商品を発信する。ここがポイントです。

それから、直接、現地を見に行くことがとても大切です。売場に行ってみたり、現地のレストランで食事をしてみて、「こんな料理を食べているのなら、うちの商品が使えるな」といった小さな発見の積み重ねが、大きな成果に結びつくのではないでしょうか。
販路展開に向けた商品開発の必要性については、本当に商品開発が必要なのかを改めて考える必要があると思います。今ある商品の本質はどこなのか、消費者からどう見られているのか、供給量は多く出せるのか、少量しか出せないのかなどを見直し、きちんと改良することが重要ではないかと思います。

三陸には、CAS冷凍の施設がたくさんあります。しかし、月の半分ほど三陸にいる私の目から見ますと、使いこなせていないのではないかと感じるのです。CAS冷凍の施設は、もしかすると三陸の一つの武器になるかもしれません。
この凍結技術を上手に使うことを、改めて考えてみてはいかがでしょうか。
そして、もう一つは、一時加工品の方が売れたりすることもあるので、「下手に味をつけない方が売れる可能性がある」ということも念頭においてください。
このように、いろいろな可能性を含めて考えてみると、販路開拓のチャンスは、たくさん出てくるのではないかと思います。

コーディネーター
有限会社永瀬事務所 代表取締役社長
『バイヤーズガイド』編集発行人
永瀬 正彦 氏

■ 三陸を水産の「人」と「情報」の集積地に

実際に売場を見に行くことの大切さや、「コト消費」の発信の仕方など、パネリストのお話を伺い、基本的には海外販路開拓も国内の販路開拓と同じではないかと感じました。
国内の販路開拓に関する考え方や手法をベースにして、食文化や宗教、価値観といった違いを意識し、ぜひ海外に向けて、三陸のすばらしい食文化を発信していただければと思います。
「三陸の食を現地で味わいたい」と思えるような発信をしたり、世界中の水産関係者が三陸で会議を開催したり、視察が行われたりといった水産集積地になるような発信もしていけると良いのではないかと思います。

感想
さまざまな立場の専門家から、多くの実例が紹介されたパネルディスカッションでした。
成功例の紹介もあり、海外への販路拡大に大いに役立つ情報が共有できたと思います。

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