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セミナーレポート 「顧客の求める商品開発」

 令和6年3月6日、仙台市の「仙台国際センター」において、「顧客の求める商品開発」と題したセミナーが開催されました。本セミナーでは、マーケットの現況や顧客が抱える課題点、それらを見据えた製品開発についてお話しいただきました。

講師
株式会社ヨークベニマル
鮮魚部 マーチャンダイザー
加藤 大棋

〈消費者の価値観の変化〉

 考え方として、消費者の方々は、目的が明確な堅実消費型と、衝動買いをする現実消費型の2タイプに分かれると思います。前者に対して後者は比較的に何も考えずに商品を手に取る方が多く、特売や目立つ陳列、パッケージで購入する傾向があり、新しさや未体験ということに価値を見出し、購買単価も高めなのが特徴です。
 現在、日本では人口減少と少子高齢化で労働人口は減少が続き、物価は3%程度上昇していますが、実質賃金は減少しています。そのような中、消費者の食に対する考え方も変化しています。以前は手抜きと言われていた外食や冷凍食品に抵抗がなくなり、時間の有効活用や、食の楽しみに癒しを求める方が増えています。
 昨年のヒット商品では、シェイクうどん(丸亀製麺様)、ワンプレート冷食、ドライクリスタル(アサヒビール様)、お店で作るスムージー(セブンイレブン様)等が見られました。
 目新しさや使い勝手もそうですが、まずは美味しいということがヒット商品になるための必須条件となっています。また、食品購入のきかっけは、SNSよりも店頭での評価によって衝動買いする傾向がみられます。

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〈地産地消・サステナビリティ〉

 一般消費者のアンケートにおいて、ASC認証、MSC認証など水産物の認証に関する声が聞かれるようになりました。現在、水産物の漁獲量は大きく減少していますが、将来的に継続して食べられるよう、持続可能性に配慮しながら取り扱っていくことが重要です。我々量販店の立場でも、「持続可能性」という言葉を通じて、いかにお客様に訴求していくかが、重要なテーマになっています。
 サステナビリティ商品への注目は高くなっているなかで、エシカル消費(持続可能な原料や、生物多様性の保護等に配慮した商品の消費行動)というものも多くなり、特に地産地消は購入者の割合も増加しています。
 また、現在、小中学校では“SDGs”を推奨した書籍が置かれ、壁にもポスターが貼られる等、日常生活にも浸透しています。当社に在籍しているバイヤーも、いずれはこのような “SDGs”を学校で教わってきた世代に向けて商品を提案する日が訪れます。よって、機会を見つけて“SDGs”に関連する学びや、議論に参加することも非常に重要なことだと考えています。

〈顧客が求める商品開発〉

 自社の顧客層が誰か、その顧客層のニーズをどれだけ満たせるかを考える必要があります。
 今は、コロナ収束後のイベント需要が増加することが予想されることから、大容量商品の需要に応えることが求められます。一方で観光客や帰省客も増える見込みであるため、地方の伝統工芸品や地域特産品の需要増も予測されます。このように潜在的なニーズを読み取れれば、新たな商品開発に繋がっていきます。
 そのために顧客がどのような考えを持っているか、イベント等で話す機会をもつことが問題解決へのポイントです。問題を解決する機能を持った商品は売れ続けます。
 こういった需要をつかむために、新しい技術、人材、世代にぜひ触れてください。価値観が日々変化する中、それらの知識や経験は重要となります。顧客が感じる課題にどう対応するかを予測することで、いざ求められた時のミスマッチがなくなります。「わからない」ではなく「こうやれば解決できる」、この一言で我々はグっと顧客に近づきます。
 また、各種セミナー等にも積極的に参加し、異業種の人々や自分と異なる世代と会話をしましょう。新たなマーケットを構築するであろうZ世代等にも接触してください。私がMDになった際に当時の先輩に言われた、「人だかりができる場所にはそれだけの魅力がある。理解できなくてもいいので人が集まる様々な場所に顔を出しなさい。そうすれば、なぜ人が集まるかいずれ分かるようになる。」との教えは、今でも印象に残っています。

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〈具体的なキーワードからの商品化〉

 マーケットのキーワードは「人口減少」、「高齢化」、「女性の社会進出」、サプライチェーンの課題では、「物流問題」や「生産者の減少」、「気候変化」、消費者価値観の変化では、「価格上昇による負担」や「タイムパフォーマンス」、「美味しさ」、サステナビリティでは、「地産地消」や「オーガニック」、「持続可能性」など、今を表す様々な課題、キーワードがあります。
 商品開発にあたり、まずは自社の強み(三陸産の原料、高い技術力、コストが安い等)を書き出してみましょう。つぎに、顧客が抱えている問題(人材不足、売場減少、コミュニケーション不足等)を抽出して、社内で話し合ってみてください。そして、マーケットやサプライチェーン等のトレンドや課題点を表す分野毎のキーワードを重ね合わせてみましょう。自社の強みを入り口に、各分野のキーワードを加えて、顧客の抱える問題に反映すると、そこには新たな商品開発のヒントが見えてくるはずです。

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 弊社で扱っている「三陸産生銀さけ」を一例にあげます。
 今までチリ産冷凍銀さけをメインで販売していましたが、水産物の高騰が続くなか、“地産地消”という切り口から “三陸産原料”を使った「三陸産生銀さけ」を開発しました。そこにSDGs等の“取得認証”を追加することで新たな付加価値・強みが加わりました。ここまでだとまだ従来品と同等です。
 弊社は、さらに「顧客の冷凍製品への抵抗感の低下」、「高齢者層の対応」等のキーワードを加えて、新たにひと工夫するだけで冷凍品でもくっつかずに容易に取り出せる「冷凍三陸銀さけ」の開発を開始。冷凍することで日持ちも長くなったほか、切身の形状や並べ方を工夫することで切身同士がくっつかなくなり、一切れずつ使いたいという高齢者のニーズにも対応できるようになりました。
 今後はチリ産の銀さけに代わり、この三陸産銀さけの比率を増やしながら販売する予定です。

 このように一つの商材の特性を分解しつつ、顧客が抱える問題や時代を反映するキーワードを追加することで、新たな付加価値を生み出すことができます。また、今ある資源、材料を活用しながら、ちょっとした変化でも構わないので工夫してみると、案外簡単なことで多くの経費をかけずに差別化を図れることもあるのでぜひ試してみてほしいと思います。
 私は18年間商品開発に携わってきましたが、競合他社が自社商品を真似ようと怖くありません。商品そのものを真似ても、顧客の問題解決には繋がらないからです。あくまでも顧客ニーズ、顧客の抱える問題に対して、商品を開発していますので、競合他社との差別化を図ることができたのです。

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〈まとめ〉

 商品開発を難しく考えず、簡単にできることから始めてみましょう。
 マーケットを知ることは、テレビやネット、家族や従業員との会話、取引先から相談等から得られることができます。身近なところから話を聞くということで良いのです。また、様々な問題に自分ならではの回答を出していく癖をつけると、悩んだ時に無意識のうちに、解決策を出せるようになります。
 我々は生産者、加工者、販売者ですが、一方で消費者でもあります。自分で作った商品は、いろんな人に見てもらいましょう。誰にとって必要か、どこで売れるか。宮城では売れなかったが山形で売れる、これはよくある話です。提案は諦めずに続けてください。
 色々な情報を分解しつつ、頭の中に箱をイメージして、そこにキーワードを保管していき、商品にどう組み込んでいくかを考えます。原料が安くて美味しいのに売れない場合は、そこにSDGsや高齢者という、時代を反映するキーワードを組み合わせてみます。すると、例えば、「骨取り」というキーワードが浮かび、高齢者向けの提案に繋がるかもしれません。
 難しく考えず、キーワードを商品に付加することで、新しい商品の形を作り、幅広い提案をしていけば、自ずと売上や利益に繋がるものと考えています。

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