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コラム復興水産販路回復アドバイザーコラム

第19回様々なリスクに負けない連携した販売戦略の検討を

勝瀬 典雄 氏
今回コラムを書いていただいた方

有限会社ビジネスプランニング
代表取締役

勝瀬 典雄

専門分野

  • 販路拡大
  • 商品開発
  • 原料調達
  • 経営
  • 流通
  • 小売販売
  • マーケティング

先日実施された「消費地商談会INスーパーマーケットトレードショー2022」では商材紹介において、プロのシェフによる海産加工商材を使用した料理が提供されていました。これが来場者からかなり好評で、その商品紹介の様子を写真で撮って、新しい売り方の参考にしたいと言った声も聞かれました。
コロナ禍で「家飲み・宅配・自宅調理・ネット購入」といった消費行動がより一般化され、国内流通環境が目まぐるしく変化する中で、これからは、従来の流通卸を主体とした販路以外にも最終消費者を視野に入れた販売戦略を行うことが重要だと思います。

これからの販売戦略の考え方

昨年、「復興水産販路回復アドバイザー」として対応した企業では、サンマの開きを大手スーパーなどに卸しており、漁獲量が落ち込んだ中でも、製品価格にはなかなか転嫁できない状況が続いていました。さらに消費動向の減少に伴い受注量も減少しているという、現在の水産加工事業者等が苦しむ典型的な状態に陥っていたのです。

そこでサンマの乾燥度を上げ賞味期限を長くしたり、調味のバリエーション増加や商品のネーミングを工夫し、ネット販売を主力にすることを提案しました。
現在、試験的な取組にて一定の効果は出ているところですが、この取組の中で課題となったのが、「加工機器が限られている」「単独企業では市場に対するマーケティングが続けられない」という点です。

私はかねてより、周辺地域とともに地域を越えた市場に対する新規展開の方法のひとつとして、各社の持つ加工技術・素材・加工機器・流通などを相互活用して新商品の開発や新規流通の確保を目的とした、連携の取組ができないかと考えてきました。

ただしこの取組を進めるに当たっては、各事業者の皆様が、お互いに積極的に加工ノウハウを開示し、相互理解しなくてはなりません。そしてその取組をコーディネートする機関や、仕組み作りが必要となってくると考えます。

「各企業の強みは企業として商品を生み出すすべての工程にある」

様々な販路開拓等の支援の仕組みの活用

現在、全国商工会連合会において進められている補助事業に「共同・協業販路開拓支援補助事業」があることをご存じでしょうか。この補助事業は「互いに足らざる経営資源を補いながら、共同・協業して商品やサービスを展開していく取組を支援する」取組で、地域振興機関と位置づけられた団体が主となって、連携の構図を企画、地域・広域を問わずに連携の構図を作り、新商品の開発や新たな販路に対するマーケティング、売り場の確保に向けた取組を支援しています。

この事業での取組は、国内にとどまらず、中東における日本の水産加工品のマーケット調査や中東のバイヤーを招いてのヒアリング等も行っています。その結果、中東は台湾・タイなどからの海産品の輸入が多くありますが、日本からは殆ど水産品の入っていないということが分かりました。まだ、調査段階ではありますが、コロナ後の市場を見据え、是非アプローチしてみるべき市場であることは間違いありません。この取組も日本の水産加工事業者等の皆様が活用することで、かなりインパクトのあるアプローチが出来るのではと感じています。

また、こういった新たな取組を行う際に「事業再構築」「ものづくり補助金」といった様々な国の中小企業に対する支援補助が提供されていますので、そちらも活用いただければと思います。

まとめ

「連携」をひとつのテーマとして述べてきましたが、「連携」という仕組み作りは簡単ではないことは良く理解しています。しかし様々なリスクにさらされている水産加工事業者等の皆様が、それぞれ単独でこのリスクに立ち向かうのはかなりのパワーを必要とします。この大きなリスクに立ち向かう戦略として、それぞれの強みを活かして手を組み次の展開に向けた戦略を考えることは、ひとつの大きな流れになると感じています。

激動の世界情勢の中での日本における水産加工業に従事している皆様は、世界に誇れる水産加工技術を持っているとともに、その構成メンバーは水産国として重要な位置にあると考えています。この様々な市場環境の変化に対して、震災復興という、どの国も経験したことのない取組で復興してきた皆様の力を連携した取組で、国内流通の改革とともに、世界に乗り出すことは非常に可能性のある取組だと考えます。
是非、それぞれの各社事業において、今後の連携した取組の可能性について考えていただければ幸いです。

「連携の構図はそれぞれのビジネスプロセスにある強みの相互活用で強みを増幅する」

※インタビューの内容および取材対象者の所属・役職等は記事公開当時のものです。