販路回復 ・ 助成事業 ・ アドバイザーについて、
まずはお気軽にご相談ください
ご相談のお申し込みはこちら

セミナーレポート「イスラム市場水産ハラルセミナー」

令和4年9月13日、「東北復興水産加工品展示商談会2022」のプレゼンステージにおいて、「イスラム市場水産ハラルセミナー」と題した、セミナーが開催されました。
本セミナーは、今後拡大するイスラム市場に対するハラルフードの可能性と、現状の水産事情を交えたハラル認証の基礎知識について講演されました。

第一部 PPIHグループの海外戦略と日本のハラル水産品と加工品について 講師
株式会社パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(以下、PPIH)
執行役員
海外事業MDサポート本部長
PPIC事務局長
渡辺 和博

<PPIHの海外事業展開>

<PPIHによる現地への日本食文化の浸透施策>

<日本産品の輸出強化に関して>

<最後に>

日本産品はそのものに価値があります。私たちは日本産品の良さをお客様に伝えていくバリューチェーンとして、大きな使命を担っています。今後も海外のお客様へ日本産品を愚直にお伝えし、味わっていただけるように努めていきたいと考えています。

第一部 PPIHグループの海外戦略と日本のハラル水産品と加工品について 講師
株式会社パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(以下、PPIH)
常務執行役員 兼 PPRMシンガポール PPRMマレーシア代表取締役社長
町田 悟史

<マレーシア展開の現状>

<ハラル認証商品の重要性>

第二部 日本のハラルビジネス最前線国内マーケット、海外マーケット座談会 パネリスト
アセットフロンティア株式会社
代表取締役
島居 里至
アジア・パートナーシップ・カンパニー
海外営業部
モハマド・シャーミン
一般社団法人ハラル・ジャパン協会
代表理事
佐久間 朋宏

<現在展開するハラルビジネスは>

島 居: アセットフロンティアでは現在、2つの事業を展開しています。
ひとつ目は輸出事業で、主に和食の輸出事業を展開しており、東南アジアを中心に約500SKUの商品を輸出しています。生鮮品ではホタテ、ウニ、イクラといった水産物の引き合いが強く、特にホタテは現地の中華系の方々に人気があり、乾燥ホタテなどが非常に売れています。この他にカニなどは、相場が1万円以上となりますが、比較的動いている商品です。
ふたつ目は飲食店で、ハラル認証を取得した飲食店「ハラルラーメン麵屋帆のる」は、東京・大阪に数店舗と、明治大学の学食でも出店しています。コロナ前まではムスリムの本拠地・インドネシアにも出店しており、人気を博していました。客単価平均1,300円と、ラーメン屋としては高い水準であり、最も高いメニューである「スパイシー唐揚げラーメン」は1,580円で提供していますが、1番の人気メニューです。です。ハラルフードでは豚チャーシュを使用できないため、旨みをしっかりと感じていただくため、唐揚げを使用しています。

シャーミン: アジア・パートナーシップ・カンパニーでは現在、ハラル学食を主体としています。
個人の話をすると、私はバングラディッシュの出身で、1987年に来日しました。日本食の基本を学びたく、和食店で10年間修行を積み、青山にあるフレンチレストランを経て、日本人向け居酒屋を開業しました。その他にもベトナムでホテルを経営していましたが、この時に日本ではハラル対応のサービスが少ないことに気づき、ハラルビジネスを展開するきっかけとなりました。
2014年には赤坂にハラルフード専門の和食店を、2015年にはハラルフード専門のキッチンカーを出店しました。これがきっかけとなって、上知大学様からハラルフードのお弁当を作れないかと相談をいただき、さらに2年後には大学内にハラル学食を開かないかと相談をいただきました。この他にも東京国際大学様や山梨大学様からもお声をいただき、ハラル学食を出店しています。
現在までにメニュー展開したハラルフードは、青森県産のベビーホタテとハラル認証のパン粉で揚げたホタテフライカレーや、イカ軟骨の天ぷら、ピーチシャークをデュエにしてトマトソースをかけたものなどがあります。

<ハラルビジネスの今後の可能性とは>

島 居: 日本国内では10月末を目処に入国上限を撤廃するといった発表がなされたばかりですが、インバウンドはこれからが期待されます。インバウンドの拡大でこれから食の多様性が求められるところですが、2021年・東京オリンピックが1つの区切りとなって国内の食の多様性が普及し、さらに2025年には大阪万博を控え、さらに活発になると予想しています。自身も万博での出店をひとつの目標に据えて、ハラルフードの普及を目指していきたいと考えています。
それから海外では、例えばマレーシアは人口3,200万人のうち6割強がムスリムですが、それ以外に中華系もたくさんいて、日本で食べられている水産珍味を購入される中華系の方も多いので、イスラム市場だからといってハラルフードだけをターゲットとせず、中華系も視野にいれて考えていくことも重要と考えます。

シャーミン: 上智大学では学生16,000名程度のうち、外国人が1,200名で、さらにイスラム教徒の学生は120名程度とまだまだ少ない状況です。しかし、日本人を含めて半数以上が女性で、そのほとんどが我々の学食を利用しています。鳥の唐揚げ、ローストチキン、ハンバーグ、野菜炒め、カレーなどのハラルメニューを提供していますが、ハラルフードやビーガン食は、ヘルシーなので好んで食す生徒が多い印象です。

<インバウンド獲得において、好まれやすいハラルフードとは>

島 居: 来日するイスラム教徒の方が食べたいものは、やはりB級グルメだと考えます。例えば、日本人が韓国で焼肉やチヂミが食べたいのと同様で、外国人も日本ではB級グルメが食べたいと思うのは当然です。PPIH様ではホタテ串が人気とのことですが、少しの工夫で人気メニューとなる可能性は大いにあります。
あと日本の味付けは物足りないとよく言われていて、甘い、辛いなど、味がはっきりしている方が好まれると考えます。

シャーミン: 来日されたイスラム教徒の方は、もちろん日本食を食べたいという心理があります。寿司は生ものが苦手な方も多いので、炙り寿司であれば食べることもできるし、天ぷらやパン粉で揚げたメニューなどは外国人に人気が高いです。
あと味付けは濃いものが好まれやすく、自店ではノーマルな味付けで提供していますが、それぞれの国のスパイスやドウガラシの粉末などを準備して、お好みの味にしてもらうようにしています。

<東北産品をイスラム圏に輸出する際の可能性は>

島 居: 東北の水産加工品には素晴らしい商品がたくさんあります。しかし、外国人がその中からどのような商品を選ぶかと考えたときに、ひとつ目のポイントは、POP、ホームページ、動画などで商品のすばらしさを英語で発信していくことだと思います。そしてふたつ目のポイントは、やはりハラル認証だと考えます。現地で商談していると、日本食は美味しくてリーズブルなのが多いが、他にお勧めのポイントはないのかとよく聞かれますが、ハラル認証を取得していれば非常に優位となります。日本国内ではまだ550社程度しかハラル認証を取得しておらず、まだまだ少ないのが現状です。FSSCや有機JASなどと同等で、これが大きな差別化につながり、商談に有利に働くと考えます。あとは賞味期限180日以上の商品が求められるところですので、こういったポイントを押さえれば大いに可能性が広がります。

シャーミン: バングラディッシュは世界一人口密度が高く、人口1億6千万人の98%がイスラム教徒です。バングラディッシュに輸出を検討する場合は、日本の味付けだと物足りないと感じる方も多いことから、できるだけ現地の味に近づけるようなものが良いと考えます。
東北でも製造されている缶詰などは保存がきくので商談に有利だと考えます。ただし、バングラディッシュへの輸出は直接ではなく、タイを経由して商品が流通されますので、こういった点も留意しておかねばなりません。

<最後に>

佐久間: 日本国内では、これからインバウンドが期待され、ハラル認証を取得することで、ハラルフードやビーガン食といった様々な面で有利となること、そして海外では日本のハラル認証商品を購入する消費者は増え、トレンドにもなっているということで、商談に有利とされている点など、今後の可能性が大いにあるとようです。

第三部 水産業界のハラルビジネス戦略 「コロナ禍でのハラルビジネスを活用した海外戦略はこれだ!」
講師
一般社団法人ハラル・ジャパン協会
代表理事
佐久間 朋宏

<ハラル認証とは>

そもそも土の中、水の中で育った野菜・果物・穀物・水産物は、そのものがハラルです。ただしイスラム諸国に輸出する時は、ハラル認証を受ける必要があります。
ハラルの国際認証機関は世界に350以上もあるとされ、統一基準がなく、それぞれの認証機関でルール、取得費用、取得期間が異なります。どこで製造して、どの国に輸出するかで事業者側が選ぶ必要があります。
日本政府は、2030年までに農林水産品の輸出額を5兆円と目標設定しており、一部では補助金の活用も可能です。取得を検討する場合には、現在取り扱っている商品がハラル認証できる可能性はあるのか、活用できる補助金はあるのか、レシピはそのままで良いのか、味を変える必要はあるのか、こういったことを踏まえて、国際認証機関を選択し、取得を目指してみてください。

<ハラル認証を目指す理由>

イスラム人口はすでに世界人口の1/4であると言われ、将来性のあるマーケットです。若い方が多いことから、2060年にはキリスト教と同じマーケットに、さらに2100年には世界人口の1/3まで成長されると言われています。
イスラム諸国で最も近いのは東南アジアで、人口6億5千万人のうち、半数の3億5千万人がイスラム教徒です。これ以外にも南西アジア、中央アジア、ロシアなどを合わせると、1億人以上のイスラム人口がいます。
さらにインドネシアやマレーシアなどは、国民所得が増えている魅力的なマーケットです。東南アジアでもハラル認証商品はたくさん製造されていますので、日本も同様にハラル認証が求められ、商談に有利に働くと言われています。
こういった点を踏まえ、人口減少で需要衰退が懸念される日本だけを対象とするのではなく、イスラム教徒、ユダヤ教徒、そしてベジタリアンに対象を広げるためにも、ハラル認証をぜひ活用することをお勧めします。さらに言えば、ハラル認証を全面に押し出すのではなく、ハラル、ベジタリアン、オーガニック、グルテンフリーといった、国内、そして海外での食の多様性に対応するといった観点でも大いに活用できます。

<ハラル認証を取得した主な水産加工品の事例>

ハラル・ジャパン協会では、認証取得のコンサルティングなども行っており、主な事例をご紹介させていただきます。

①海苔、あおさ 味付けのりはみりんやお酒が入っているため、ハラル認証に適さない商品ですが、焼きのりや青さなどはハラル認証に適していて、消費者にわかりやすく安心安全を証明することができます。

②だし、かつおパック、煮干し だしなどは、百円程度の単価で販売されていますが、こういった商品でさえハラル対応が進んでいますので、ハラル認証がいかに可能性あるものかということが分かります。

③キャビア、キャビアバター ハラル認証を取得したキャビア、キャビアバター、それからチョウザメの肉などは、海外の7つ星ホテルや5つ星ホテルに採用されるために取得しているといった事例もあります。

④その他水産加工品 マレーシアやシンガポールには「メカジキの切り身」、インドネシアには「花かつお」、マレーシアやアメリカには「ワカメ」「昆布」などを輸出しています。やはりハラル認証があるとバイヤーは商談に前向きになるのを実感します。

<最後に>

ハラル認証の取得はそこまで難しくありません。認証を取得することで、エリアによっては商談数が劇的に増える可能性があります。現在、水産業でも徐々にハラル認証商品が増えています。ビーガンやベジタリアンなどの水産と離れた分野も情報収集してみてください。このような知識を組み合わせることで、さらに海外に販売していく可能性が広がります。ハラルマーケットが広がる現在、チャンスを獲得していきましょう。