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セミナーレポート

セミナーレポート「東日本大震災被災地域の水産加工品を海外に売り込め!水産加工品 販路開拓 推進フォーラム」パネルディスカッション

令和元年12月3日、パレスへいあん(宮城県仙台市)において「水産加工品 販路開拓推進フォーラム パネルディスカッション」が開催されました。東日本大震災によって販路を絶たれた東北被災地域の水産加工品等。これらに関して、訪日観光客市場への販路展開を意識した、新たな東北のブランド力の強化をテーマに開催されました。その概要をご紹介します。

【パネリスト】
有限会社三陸とれたて市場
代表取締役 八木 健一郎 氏

■ あり得ない場所に、あり得ないグレードのものを送り出す

2004年にこの会社を立ち上げ、船に設置したネットカメラで漁を中継するなどICTを活用した販促を行っていました。しかし、震災で資産全てを流失しました。そこから漁業の立て直しではなく、凍結の世界に踏み出したのです。最新の凍結技術CASを活用しながら、商品を現場に送り出しています。震災から9年という時間が経過したいま、復興というフレームに限定されない、産業創生的視点から資源情報、世界のマーケット情報を見た水産業の建て直しが重要になっていると思います。東北の水産業が震災によって異業種連携が進み、流動性を帯びてきました。これをいかに産業まで育てるのか。改めて資産価値を評価して、国の財産としてさらなる水産資源の活用方法を検討するところまで行きたいと思っています。

私は、この4年ほどアジア圏を中心に旅に出ているような状態なのですが、一つ、確信していることがあります。海外におけるいまの日本食、水産物の人気は一過性のブームにすぎないということです。このブームのあとに、経済として定着させるための輸送構造も含めたプラットフォームでの商品供給が求められていることを感じています。シンガポールのマリーナベイサンズにある、屋上大プールが象徴するように、あるものがあるべき場所にあるのでは、価値は生まれません。いかに、あり得ない場所に、あり得ないグレードのものを送り出していくかが勝負になってきます。日本の技術とは、生産管理のスキーム自体も希有なもので、生きたタンパク質を扱う技能に極めて長けている点にあります。次の段階に進んだ水産流通をいかに仕掛けていくのか。ワクワクする時代になってきました。

また、弊社では天然魚を原料にして、本年度中のEU-HACCP申請、施設登録を目指して作業を進めています。HACCPは、そもそも宇宙飛行士に食料を持っていくためにつくられた経緯があるので、ハードルが高いのは当然なのです。実際に、私たちは東日本大震災発生から10年後の2021年を目標に宇宙ステーションに刺身を持っていこうという話を進めています。HACCPをうっとうしい管理指針と捉えるのではなく、「強豪を防ぐバリアになる」という考えで挑むのが良いのではないでしょうか。

観光業と水産業の連携に関しては、食は観光との親和性が大変高いものであると捉えています。例えば、私たちがタイから飲食店のオーナーさんを呼び、船に乗っていただくと、その様子や食べているものを、彼らは写真や動画に撮ってSNSにアップします。その横にLCCで安価にタイから東北に来られるという情報を付加することができれば、特段、ツアーを組まなくても「東北」という名前を売り出してくれる効果が期待できます。

今後の支援策に関しては、本格的に分断された地方の産業構造、その各セクター同士をつなげて、地域の産業として力強く確立していくのが見たいですし、ある種、事業体の整理統廃合に近いところまで、国がコミットするような時代に差し掛かっているのではないかとも思います。水産業は現在、大本営がどこにもない状態です。資源を国力にするために、水産業を産業たらしめる。そんな大本営がほしいと思います。

【パネリスト】
株式会社フィッシャーマン・ジャパン・マーケティング
取締役 土合 和樹 氏

■ 漁業者と水産加工・流通業者が一体となった取り組みを

石巻において、漁業の担い手育成事業と販路開拓事業を行うフィッシャーマン・ジャパン、販売を受け持つフィッシャーマン・ジャパン・マーケティングの2社体制で取り組んでいます。縮小していく国内市場に対し、拡大を続ける海外市場への販路開拓は、必須と考えています。一方で、英語でのコミュニケーションの問題、書類作成の煩雑さに諦める人が多いのも事実です。私たちは、その点を解決する選択肢として、東北・食文化輸出推進事業協同組合に加入しました。組合員になることで、煩雑な事務は事務局に任せ、組合員は営業に専念できます。この他にも、海外と取引のある国内商社に売り込むなど、国内で完結する進め方はあると思いますので、検討する余地はまだまだあります。

海外販路を考えるとき、避けて通れないのがHACCPです。実際、私たちはどこの国に行っても「HACCP、ISOを持っていますか」と聞かれます。HACCP認証には種類があり、アメリカのものを持っていても、EUでは販売できないこともありますので、輸出する地域を絞るまでは、HACCPに準じたレベルを目指して準備しておき、いつでも取得できるようにしておくのが良いと思います。

次に「食のトレンド」についてですが、私たちが大切にしているのは、産地の情報やストーリー、ライブ感やリアリティで、いまなら産地から飲食店さんへ、そして、その先の消費者までインターネットで簡単に、無料でそれらを届けることができます。これを活用しない手はありません。私たちは、市場で魚を買うところや、漁の映像などを情報発信しています。それをお客さまである飲食店さんが、お店に消費者を呼ぶためにSNSでシェアします。さらには、情報元であるフィッシャーマン・ジャパンの商品を食べてみたいと思う消費者が増えれば、その要望に応えたいレストランさんからの注文も増えるでしょう。飲食店さんだけでなく、その先の消費者も産地のファンになってくれる可能性が生まれるのです。

オーガニックやハラルなど、多様性に対する取り組みについての考えをお話ししますと、例えば、ヒラメの刺身はヒラメしか使っていないのだから、「ポークは使っていない」と表示する必要はないと考えがちです。しかし、海外のさまざまな展示会では、あえて「No animal」、「No pork」、「No Additive」と貼り出しています。「No 〇〇」を探している人のアンテナに引っかかるためには、当たり前のことをあえて書くべきであると思います。

今後、漁業法が改正され、資源管理が厳しくなる中、水揚げ量は減少し、原料価格はさらに高まると見られています。このような中で、漁業者は農水省、水産加工・流通業者は農水省・経産省と、管轄が分かれている現状を変えて、例えば「水産経済庁」のような組織ができて、漁業者と水産加工・流通業者が一緒に政策をつくるような流れができると良いのではないかと思います。

【パネリスト】
岩手県産株式会社
営業部営業課 海外事業室 係長
田村 茉利恵 氏

■ 商品のバックグラウンドとストーリー性を大切に

弊社は岩手県の第三セクターで、ひと言で申しますと、“岩手県産品専門の産地問屋”といった仕事をしています。海外販路開拓で最優先すべきは、まず「ターゲットを決める」ことです。自社商品がそこの国・エリア向きなのかを見直し、小売向きなのか、卸向きなのか、その国の冷凍食材に対する意識はどうか、自宅で調理をするのかなど、ターゲットに関する事前の分析が必要です。また、三陸の産物は、北海道のものと良く比較されます。品質的には決して見劣りしないのですが、勝負をするとなると難しい部分もあります。輸出となれば高価になってしまう三陸の食材ですが、なぜ高いのか、そのストーリーをバイヤーに伝えることができれば、可能性があると個人的には信じています。

現状の衛生管理意識については、HACCP以前に衛生管理の考え方自体に生産者と消費者間でギャップがあります。いわゆる「昔ながらの製法」という謳い文句は、東北の食材にとっては付加価値になり得るものですが、管理面でもまだまだ「昔ながら」である部分が多いです。「安心・安全」は、日本食に対する安定のキーワードです。何らかの目に見える形で衛生面を証明することが、今後ますます必要になってきます。輸出を意識するのであれば、HACCPは確実に必要で、認証の準備を進めていただきたいというのが正直なところです。

東北のインバウンド需要を盛り込んだ観光業と水産業の連携のポイントとなるのは、現代人の旅の仕方を意識したプランニングとマーケティングで、いかに「特別感」、「ローカル感」、「本物感」を盛り込むかが大切になってくると思います。また、若い世代は特にSNSで自慢したいという意識があるので、体験型は効果的です。もう一つのイメージとしては、「住むように旅する」をかなえてあげることです。今、カスタマイズして旅をする人が多く、旅行者がご近所感覚で気軽に立ち寄れる施設や雰囲気づくりが大事になります。東北まで来る旅行者は、ステレオタイプな旅行を求めているわけではありません。いかにリアルでマニアックと感じられる体験をさせてあげることができるかが鍵です。それから単独では手間とコストがかかる企画でも、地域全体を巻き込めば負担が減ります。協力業者間でルートやプランを組んで一体感を演出することで、三陸全体の満足度を効果的にあげられると思います。

これからの食のトレンドを考えるとき、健康志向は世界的なトレンドとした上で、高齢化、夫婦共働きが進む現代のキーワードは、「なるべく時短、でも手抜きとは思われない」と「丁寧な暮らし」で、これらを両立させる商品がますます好まれると思います。また、地方産品が大手メーカー商品と価格で張り合うのは厳しいですが、商品の開発秘話、つくり手の人柄、あとは生産地の環境・風土などをきちんと伝え、納得させられれば、市場価格が3倍になるとも言われる海外でも勝負できると思います。

実は、これは弊社の課題でもありますが、多品種小ロットで輸送できる仕組みづくりとロジスティクスが必要であると考えています。国内・国外取引のどちらでも、一つの商品を大量に売る商売は非常に限られます。多くの生産者は、数アイテムの加工商材を通年あるいは季節で回しており、オーダーも混載になることが多いです。ただその場合、手間や物流コストが余計にかかるため、遠方に送るとき、いくらロットを設定していても利益率が小さくなってしまいます。この問題点を解消できれば、流通の幅がもっと広がると思います。

【パネリスト】
株式会社電通
ビジネスD&A局 グロース事業開発部
ディレクター  金井 毅 氏

■「昔ながらの製法でありながらHACCPレベル」を実現

震災の前から、東北エリアのコンテンツ(商品)を磨くことを目的に、さまざまなマッチングを行っています。震災で大変な被害を受けた東北ですが、9年が経過したいま、いろいろな資産ができあがってきています。一方では、活用し切れていない資産もあるのではないかとも感じます。それらを洗い出して、改めて何ができるのか、どうすれば売れるのか、もっと価値を高めることができるのか、資産の棚卸しと再評価を通して、価値化することが今後の課題になると思います。

また、海外の販路に関しては、売り先を改めて考えるということが一つ。それから、現在、課題になっているのは食中毒です。高級ホテルなどには、水産物を生で持ち込むことができなくなっています。そこで、パネリストのお一人である八木さんの出番ではないかと思うのですが、八木さんが手がけるCASという高品質冷凍の技術が生かされるはずです。このような流れからも、HACCPは武器にするつもりで取得しておかなければならないと考えます。ただ、一つだけお願いしたいことがあります。先ほど、パネリストの田村さんからご指摘があった「昔ながらの製法」ですが、これも残すということです。特に三陸の商品には、型にはめて工業製品化してほしくないという思いがあります。「昔ながらの製法でありながら、HACCPレベル」が実現できれば素晴らしいですね。

観光業と水産業の連携という点では、インバウンドの旅行者は「何気ない日常」を求めています。例えば、松島で実施している笹かまの手焼き体験、これを楽しむ外国人が増えています。インバウンドは構えなくて良いので、「体験できること」を用意することが大切ではないかと思います。もう一つは、自社の商品が見られるホームページが必要で、もちろん英文対応、スマホ対応は必須です。それを見た人たちが買いに来てくれる可能性がありますし、お客さんは自分が気に入ったものは、勝手に発信してくれます。

アジア人は、健康だけでなく、美容に対しても大変敏感です。「低カロリー・高タンパク」を食のトレンドと捉え、そこに応えるキーワードを発信する。それも国内外を問わず、「30代の女性」をターゲットに考えると良いようです。30代の女性が買うものは、売れる可能性が高いです。それから、大切にしたいのはストーリーへの共感です。インスタグラムは、可愛いものや見栄えの良いもの、うんちく、ときには気持ちの悪いものにまで反応、共感が集まり、「商品の価格を倍にする」などとも言われるほどですから、ぜひ活用したいものです。それから、自分たちの商品を売り込みたい国における食生活の現状を知る必要があります。例えば、いま中国では、休日に父親が料理をするのが流行しています。このようなトレンドをしっかり掴み、その上で、自分たちの商品をどこに差し込めるかを決めること。これがポイントになってくると思います。

今後、目指したいのは「三陸水産業のホールディングス化」です。三陸の水産業を一つの大きな事業として捉えて、各企業の強み・弱みを評価しながら連携し、良いものを共有し、競争もする。ホールディングスという傘の下で、成長するしかけをつくる必要があると思います。働き手の共有はできないにしても、マーケティングや営業の人材は共有できる可能性あります。夢のような話かもしれませんが、このような仕組みがないと、せっかくの良いものが埋もれてしまうのではないかと思います。ここが最大の課題ではないかと考えます。

【まとめ】

【コーディネーター】
有限会社永瀬事務所 代表取締役社長
『バイヤーズ・ガイド』編集発行人
永瀬 正彦 氏

■ キーワードを今後の事業のヒントに

今回は海外販路開拓に加えて、訪日観光客市場への販路展開に向けた商品開発、東北のインバウンド需要を盛り込み、新たな東北のブランド力強化をテーマに話を進めました。その中で「幅広い連携」、「ターゲットの絞り込み」、「価値の創出」、「リアルな体験をさせる観光コンテンツ」など、さまざまなキーワードが出てきました。パネリストの皆さまからのご意見が、本日ご参加いただいた皆さまのお仕事のヒントにつながればうれしい限りです。

感想
パネリストの方々の実体験や実感が披露され、水産業全体を俯瞰する視点を持つと同時に、興味のある場所には自分の足で立ち、現地で情報を収集することの大切さが伝わる内容でした。訪日観光客市場への販路拡大の第一歩を踏み出すヒントになったと思われます。

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