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セミナーレポート「東北復興水産加工品展示商談会2020に向けて」

令和2年1月16日、八戸市水産会館において、『「東北復興水産加工品展示商談会2019」フォローアップセミナー』が開催されました。これまで同商談会で実施された国内バイヤーとの個別相談会の経過を振り返りながら、商談会前の準備やその後のアプローチの大切さ、ミスマッチを生まない商品の提案方法などについて、サプライヤー・バイヤー双方の立場を知る専門家からアドバイスをいただきました。

【講師】
仙台商工会議所
震災復興販路回復・拡大支援事業
コーディネーター
遠藤 光好

念入りな準備とフォローが必須

今回は、これまでに5回実施した「東北復興水産加工品展示商談会」(以下、水産加工商談会)を総括的に捉えて、次回の水産加工商談会を成功に終わらせるために取り組んでいただきたいことについてお話しいたします。

水産加工商談会で実施している個別商談会への参加ですが、初年度は100%でした。しかし、徐々に個別商談会への参加を断る方が増え、昨年は4分の1の方々が不参加でした。また、昨年の個別商談会の結果を見ますと、八戸の商談成立率は最初が12.3%。その後、バイヤーから提示された課題を改善し、2ヵ月後には22.2%に成約率が上がりました。問題は成約率が低下した地域で、その取り組み方を検証することで課題が見えてきます。

なぜ、2ヵ月後に商談の評価が落ちたのか。毎回、バイヤーを対象にしたアンケートを終了直後と2ヵ月後の2回、実施しているのですが、それには、「(バイヤーが)催促したにもかかわらず、見積もサンプルもなかった」という回答が多く寄せられています(資料1・2参照)。

また、「商談後、サプライヤーから何の音沙汰もない」という回答も少なくありません。個別商談会後、バイヤーからの要望をどう消化するかが非常に重要で、それが成約・不成約の分かれ目になっています。この個別商談会には、個人では商談の席にたどり着くのも難しい企業のバイヤーにおいでいただいています。毎回、サプライヤーにプラスをもたらしてくださるバイヤーを新たに選ばせていただき、私たちコーディネーターが直接、訪問して、この商談会の趣旨を理解していただいています。意欲的なバイヤーさんにおいでいただいていますので、個別商談会には必ずご参加ください。

資料1
「東北復興水産加工品展示商談会2019」バイヤーの感想・要望などのとりまとめ
  • ①感想・要望記入バイヤー数 41社 / 60社 68.3%
  • ②ほぼ満足した内容の回答 25社 / 41社 61.0%
  • ③要望のあった回答 16社 / 41社 39.0%
  • *バイヤーの担当業務を理解しないで商品提案するサプライヤーがいた。
  • *バイヤーの探している商材が分からないで商談に臨んでいるサプライヤーが多い。
    マッチング時点で担当者の所属・名前・メールアドレスを知らせ事前のアプローチをお願いしているが、実行されていない。
  • *同じアイテムだけ提案された。他の商材も欲しい。
    (機械的にマッチングしている弊害)
  • *仕入最低ロットが大きすぎる。
  • *販売体制が整わない商品を持参したサプライヤーが数社。
  • *商品のコンセプトが明確でない。説明できない。
  • *提案する商品のこだわりとストーリーを整理しまとめてから参加して欲しい。
  • *商材は必ず持参してください。試食も出来ない。
    サプライヤーの対応力不足、勉強不足。
  • *出展社数が少なく、昨年に比べおとなしい。(個別商談参加社98社74.8%)
  • *商談キャンセルの穴埋めをお願いします。(当日2商談キャンセルのケースあり)
  • *パンフレットにある出展者企業紹介を事前に見せて欲しい。
    (サプライヤー商品情報をお届けしている)
  • *あえて三陸原料を使用した加工品を扱うメリットが見えない。
    (三陸原料のメリットを説明しきれていない)
資料2
「東北復興水産加工品展示商談会2019」2カ月後評価時のバイヤーの感想・要望などのとりまとめ(2019.10.11)
  • ①感想・要望記入バイヤー数 26社 / 60社 43.3%
  • ②ほぼ満足した内容の回答 9社 / 26社 34.6%
  • ③要望のあった回答 15社 / 26社 57.7%
  • ④その他 2社 / 26社 7.7%
    (一部重複あり)
  • *個別商談後メール1本来ないサプライヤーあり、見積り依頼するも返事なし、商品台帳・見積書を依頼しても提出物が頂けないメーカーあり。
    ⇒最多の8件
  • *ロットや送料込みでの現地の価格が折り合わない。
    商談企業選定前に企業毎の一押し商品の詳細を知りたい。
    (サプライヤー商品情報をお届けしている)
    ⇒6件
  • *商品プロモーションに情熱が欲しい。バイヤーの心が動く感動が欲しい。
  • *ある業者はスーパー向けの商品開発はしていないのでというお話でしたが、現地ではスーパー向けにも出荷しているとのことでした。
  • *サプライヤーが時間通りに来なくて、商談時間が少なくなった事は残念だ。

バイヤーから多くを学ぶ

皆さんが個別商談会のために用意するFCPシートで、バイヤーが注目するのは商品名と商品PRです。ここを読むことで、この商品がどのようなシーンで食べて欲しいものとして開発されたのか、例えば、「誕生日などのハレの日にふさわしい」、あるいは「晩酌のおつまみとして」といったことを書くことで、バイヤーは「これはうちの商品になる」ということがイメージしやすくなります。

ターゲットが決まると、商品の置き場が見えてくる。商談成立に繋がる…という道筋が見えてきますので、バイヤーの気持ちを動かすためにも、商品ごとに言葉を使い分けてください。自社商品の良さをいかに伝えるかがポイントになります。生産者の目線と、買い手を代表するバイヤーの声を通じて、自分の商品を客観的に見たときにどのような評価が得られるのか。それを知るのが、個別商談会の大きな意義です。

もしも、これまで引き合いのなかった業界のバイヤーが、自社商品に興味を持ってくれたとします。そのときは「この業界とは関係ない」と切り捨てるのではなく、「自分たちが気づいていない魅力が、自社商品にあるのかもしれない」と考えて、個別商談会に臨むようにしてください。

商品づくりの視点とは

2015年に実施された国勢調査のデータを見ますと、1世帯あたりの人数が減ってきていることが分かります。青森県で最も人口が多いのは青森市で、全国平均の2.33人よりも多い2.632人です。地元なら、1つ200gから300gの量目でも売れる可能性がありますが、首都圏や仙台市となると、単身者や学生が多いことから食べ切りサイズが好まれますし、首都圏では調理道具を一切持たず、「レンジでチン」するだけのレンチン生活を送っている人も少なくありません。従って、これからのマーケットを考えれば、単身者や調理をしないライフスタイルに目を向けてみる必要があります。

さらに20年後に人口が減少する割合が高い都道府県のベストテンに、宮城を除く東北5県が入っています(資料3参照)。このような状況で、地元のマーケットだけを対象にしていて良いのかという問題もあります。ですから、県外のバイヤーと大いに商談できる個別商談会は、大きなチャンスなのです。

この他にも、いまある商品のパッケージデザインを変えてみるとか、先ほどから申し上げておりますように量目を変えてみる、うまみ調味料や保存料、合成着色料などを使用せず、安心・安全を謳える商品に変えていく。このような視点で、さらなる自社商品のブラッシュアップに取り組み、最後となる水産商談会を実りあるものにしていただきたいと思います。

資料3
「都道府県別人口減少率」(10位まで抜粋)
感想

これまでの「東北復興水産加工品展示商談会」を、バイヤー対象のアンケート結果から振り返ったり、人口減少を示すデータを織り交ぜたりしながら、今後の課題や改善点が分かりやすく示されました。特に、個別商談会の意義や準備の大切さを再認識するセミナーとなりました。

※セミナーの内容および講師の所属・役職等は記事公開当時のものです。