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セミナーレポート「水産物の市場流通について」開催報告

東日本大震災以降、原発事故の影響により、相馬地域の水産業は風評被害の影響を受け、試験操業のみが行われています。このような状況下でも、魅力ある商品をつくり、販路を広げていくにはどうしたら良いのか。今後の対応策を検討するためのセミナーが、平成31年1月20日、松崎公一氏を講師に、相馬商工会議所において開催されました。その概要をご紹介いたします。

松崎 公一

〈プロフィール〉
1974年岩手県漁連 指導部振興課に技師として就職。1976年東京都足立市場 東京北魚㈱に転職。営業部長、常務取締役を歴任し、2012年に退任。2013年から2年間、東久留米水産地方卸売市場 丸北水産㈱で代表取締役社長を務める。

卸売市場は「必要な存在」

今は卸売市場というと時代遅れの印象をお持ちかもしれません。一般消費者にすれば、今の商流の中心はネット通販やTVショッピングです。
水産物は、産地直送を行っているところや仲買業者さんがウェブサイトを立ち上げてネット通販を行っているケースもありますが、市場で展開されるのはフェイス・トゥー・フェイスの商売。直接、取引できる点に安心感を覚える人も多いのです。

また、水産物の卸売市場経由率をみますと、昭和52年ごろは77〜78%で、今は52%くらいになっています(表1参照)。

減少はしているものの、まだまだ大きな存在ですし、ネット販売を行うにしても、市場価格を参考にして価格を決めているようなので、必要な存在であるといえます。

(表1)

出荷単位の変化「種類は多く、量は少なく」

市場を見ていて感じるのは、出荷の単位が変わってきていることです。以前、鮮魚は、貨車やトラックで10キロくらいずつ木箱に入れられて運ばれてきました。しかし、鮭を例にとりますと、今、最もスタンダードなのは7〜8枚が真空パックされて発泡スチロールの箱に入ったスタイルが主流です。行き着くところまでいったと思うのは、パック商品で、買ってそのまま店頭に並べることができるようになりました。

便利になった一方で、失われたものもあります。
それは、魚の善し悪しを見極める「目利き力」で、これが間違いなく低下しました。ただ大変簡便なので、多くの商品がこのような形になっているのが現状です。

以前は、仲卸業者さんが買った魚は、そのまま箱で相手に渡していましたが、今は最初に箱から一本ずつ量り売りをして、次は半身に、その次は4分の1にして売っているのではないかと思います。
そうすることで喜んでくれるのは、一般の消費者と居酒屋さんです。居酒屋は最初から半身にしたものを「種類は多く、量は少なく」買って行き、足りないくらいで終わらせる。
そんな買い方に変わってきています。

市民に愛される市場へ

農林水産省が市場の統合および地方市場化を進めた結果、中央卸売市場を開設する都市の数は、平成19年には52都市にあったものが、平成29年には40都市になっています。
また、市場の数は平成19年は81ありましたが、平成29年には64に減っています。それに比例して卸売業者さん、仲卸業者さんも減少しています。

このような状況の中にあって、今、市場がやろうとしているのは「市民に愛される市場になること」です。

これまでは、「一般の消費者は卸売市場には入らないでください」という対応でした。しかし、20年ほど前から積極的に一般の方を市場に入れるようになりました。それは、この人たちが年末年始の準備で卸売市場に買物に訪れ、まとまった金額のお金を使ってくれるようになったからです。
卸売市場に出入りするようになった一般の人の魚を見る目が肥えてきたので、仲卸業者さんたちは、より詳しい商品説明をするために勉強しなければならなくなっています。また、商品の傾向としては、すぐに食べられる商品が増えています。

自社商品の位置づけを知る

市場からスーパーに運び込まれた水産物は、スーパーのバックヤードでパックされる商品と、すでに外でパックされて運び込まれる商品があります。私は、基本的には店内でパックする商品がベターであると思います。商品の良し悪しがわかりますし、何よりも味がわかるからです。

また、スーパーの流通担当者は、商材についてさまざまな地区の情報を持っています。
ぜひ、自分の商品について「競合する会社はあるのか」、「売れ筋はどんなブランド」で、「どこの産地のものなのか」といった情報を入手してください。そして、それらが並ぶ売り場に実際に足を運んでみてください。競合他社の情報収集はもちろん、自社の商品がどんな位置づけにあるのかを見てください。実際に自社商品が並ぶ売場を見ている加工業者さんの中には、成長しているところが多い印象があります。

自社に合った販売チャネルを模索

いま、さまざまな都道府県が東京都内にアンテナショップを設けていますが、限られたスペースで展開しているので、例えば福島の産品を全地区から出してしまうと、焦点がぼやけて特徴がわからなくなっているように感じます。価格も若干高めで、似たようなものが何種類もあります。

それよりは、的を絞った商品構成にした方が、買う側も選びやすいし、バイヤーさんの注目度も高まるのではないでしょうか。
卸売市場の関係者でいえば、卸売業者は自分で商品をつくりませんが、商品開発は重要な仕事だと思っています。協力してくれる加工業者さんを頼りにしているのです。

販売のチャネルはネット通販や道の駅、生協とたくさんあります。
また、輸出に関しても政府が積極的に推進していますので、自社には何が合っているのか、何をすれば上手くいきそうなのかを市場の変化、売場の変化などを見ながら吟味することが賢明であると思います。

感想売れる鮮魚および水産加工品について卸売市場の現状からお話を伺いました。ネットショッピングが盛んになる一方、卸売市場で展開されるフェイス・トゥー・フェイスの商売、スーパーの流通担当者から収集する情報には、商品開発に有益なヒントが隠されているようです。

※セミナーの内容および講師の所属・役職等は記事公開当時のものです。