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セミナーレポート

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「SDG'Sを水産加工業に活かそう!」

令和4年9月13日、「東北復興水産加工品展示商談会2022」のプレゼンステージにおいて、「SDG'sを水産加工業に活かそう!」と題した、セミナーが開催されました。
本セミナーは、今話題となっている【SDG's】をテーマとに、事例紹介を交えながら、魚食マーケットの実情について講演されました。

講師
小谷フードビジネス
代表 小谷 一彦 氏 氏

<魚食マーケットの変化>

1、社会環境の変化
50~40年前の売り手市場では、モノ不足で、モノを出せば売れるといった時代でした。30~4年前(コロナ禍前)の買い手市場では、モノが余って消費意欲は低下し、欲しいものしか購入しないといった状況が続きました。そして、コロナ禍に入ってからは価値観がさらに変化し、消費者の意思決定方法は情報やネットによって大きく左右されるようになりました。
また、人口構造も大きく変化し、今や総人口に対する65歳以上の比率は29.1%で、50年後は39%まで上昇し、人口は3割減になると予測されています。100歳以上の割合はすでに1,600人に1人の割合で、いわゆる人生100年時代は身近なものとなっています。
さらに、食品ロス問題も大きな課題となりました。日本で廃棄されている食品は、2020年で年間522万トンと、前年よりは減少しているものの、日本人一人当たりに対し、毎日茶碗一杯分程度の量が廃棄されており、世界で上位に入るほど未だ高い水準となっています。

2、物価の高騰
日本では、都市ガスが28%増、電気代が2割増、食用油が34%増と、生活インフラ・食材を含めた物価が高騰しています。
特に毎日購入する食品は5%もの上昇が見られ、消費者体感では2倍もの値上げとなっており、マーケットに大きな影響を及ぼしています。
コロナ禍であった2年間の食の変化として、内食の拡大、中食の拡大、外食の縮小が見られましたが、最近では、家庭用の食材高騰を受け、特に独身者や単身者において、外食の方が節約できると見ている方も増えるなど、今後も値上げが継続すれば、節約するものとお金をかけるもののメリハリ消費が強まっていくのは必至です。
食の3大志向においては、昨年まで①健康志向、②簡便性、③経済性が求められていたところですが、今年に入ってからは①健康志向、②経済性、③簡便性と、経済性が重視されるようになり、物価上昇が与える影響の大きさを実感します。

3、販売チャネルの変化
魚を購入する場所は、これまで総合・食品スーパー、ディスカウント・業務スーパー、ネット・宅配、鮮魚専門チェーンといった販売チャネルがありましたが、コロナ禍で生活環境が変化し、移動販売、ドラッグストア、ダークストア、無人店舗などの新たな販売チャネルが誕生しました。
誕生から60~70年余りとなった食品スーパーをはじめとする小売業では、今までチラシといった広告媒体を通じて告知を行い、販売計画を立て、その結果で売買再起を取る事業スタイルだったわけですが、現在はより精度の高い購買利益、これらに伴うデータ分析、需要予測、在庫管理、こういったものの管理最適化が求められてきています。
このように、顧客への提案・提供方法も、時代によって大きく変わってきています。

4、マーケットインによる商品開発の変化
マーケットインとは、いわゆる「生産者・加工業者の方々が、顧客の要望やマーケットの課題点を突きつめながら、それに応えうる商品・サービスを作る」といった考え方を指します。
水産分野では、“味”、“品質”、“価格”、“品揃い”といった切り口から、マーケットニーズを把握することが重要です。
現在、様々な企業でパートナーシップによる商品開発が求められています。原料不足や未調達によって、商品開発力が落ちることが懸念されていますが、これを打開するには、顕在化需要、潜在化需要を抽出し、仮説をもって変化し続ける消費者ニーズに対応していくことが重要です。この対応の際に、外部視点の上手な通り入れや、チーム・パートナーシップを取り込むことが今後の大きなポイントになります。
価値提案をする為の商品開発という点では、原料メーカー、惣菜メーカー、容器メーカー、調理メーカーといった皆様とチームを結成して、コーディネート・情報共有することが必要となっています。
また、小売バイヤー視点から見た新規商品を仕入れる際のポイントは、現在扱っている商品と新規商品を比較して、現状よりも優位性があるかどうかです。特に、小売バイヤーはお客様目線を重視しますので、競合商品と比べた際の優位性が商品開発をする際に大前提となります。

<SDG's視点からの取り組み事例>

1、エシカル消費の需要拡大
消費者が魚を購入する際の心理は、味(美味しそう)、鮮度(新鮮そう)、価格(お手軽そう)、品揃え(豊富そう)が一般的で、これは長らくの間、商品の評価軸となっていました。
これが現在では、SDG'sの浸透によって、エシカル消費(消費者それぞれが社会的課題に対する解決を考慮したり、課題に取り組む事業者を応援しながら消費活動を行うこと)といった商品が求められるようになったことで、環境認証された水産物を選ぶといった、新たな価値観を持った消費者が今後着実に増えいくものと予想されます。
この需要獲得こそ現在の好機となっています。消費者は、エシカル消費に値する商品はどこで販売されているのか、どういった商品があるのかを探している最中です。こういったことから、実際にどこの売場で販売されているか、どのように商品開発がなされているのかを考えてみますと、SDG'sとエシカル商品は親和性が非常に高いと言えます。

2、サステナブルな水産物の普及
魚を選択する基準は、新鮮・安全・価格で、小売業ではこれらを軸に、年間52週にわたって計画を立て販売してきました。
ところが、昨今、旬や盛漁期の時期にも関わらず、魚が獲れないといった事態に陥り、天然魚で言えば水揚げ不安定、魚体の小型化といった状況が続いており、養殖魚は飼料単価の上昇や後継者不足も深刻です。
しかし、陸上養殖の普及が進み、さらにはSDG'sの浸透により、サステナブルな養殖水産物といった言葉が多く聞かれるようになりました。小売業にとっては安定供給、かつ国産といった利点もあるため、さらに価値を見出だすことが可能です。
水産物はすでに海・川だけではなく、陸上も求められる時代になったように感じます。

SDG'sの目標に「海の豊かさを守ろう」とありますが、具体的な施策のひとつに水産エコラベルの推進があります。生態系や資源の持続性に配慮し、生産された水産物に対して、消費者が選択的に購入できるよう、MEL※をはじめとした水産エコラベルを商品に表示されるといったスキームのことです。
まだまだ購入が少ないことも事実ですが、エシカル消費に関心のある消費者も多いことから、同じ値段ならば、水産エコラベルがついていないものよりは、水産エコラベルがついているものを購入される消費者がこれから増えてくるであろうと見ています。
水産エコラベルには生産段階認証と流通段階認証の2つの種類がありますが、生産段階認証は漁業者や養殖業者に対する認証で、流通段階認証は中間流通、加工業者、小売店、外食店に対する認証となっています。水産エコラベル認証は徐々に増えつつありますが、消費者の目にはまだまだ触れる機会が少ないのが現状です。
※水産資源の持続的利用、環境や生態系の保全に配慮した管理を積極的に行っている漁業・養殖の生産者と、そのような生産者からの水産物を加工・流通している事業者を認証する水産エコラベル

事例①:食堂での水産エコラベル認証の普及
横浜南部市場内で食堂を経営されている「横濱屋本舗食堂」様は、昨年10月にMELの流通加工段階認証を取得しました。
初めはMEL認証マークを見ても無反応なお客様が多かったのですが、軒先にMELを取得した真鯛・カンパチ・ヒラメを提供しているといった看板を貼ったところ、今年に入ってからこのマークは何かといった質問が寄せられるようになりました。当初から比較すると大きな変化であり、間違いなく徐々に浸透していくと肌で実感されているそうです。
なお、「横濱屋本舗食堂」様で最も売れ行きが良いのは海鮮丼(MEL認証取得)だそうです。こういった関心の高まりを受け、カツオのタタキ、シラス、牡蠣などの水産物を提供する飲食店も増えています。こういった事例から、このMEL認証などは浸透しやすい段階に移っているのではないかと考えています。

事例②:シラスの商品価値向上
シラスは、比較的大きめのサイズが2~3割程度取れるのですが、市場では規格外として扱われ、半値程度の価格で取引されることもあります。こういった商品に新たな価値を加えるべく、むしろ2~3割しかとれないのは希少性があり、大きいから安い・小さいから価値があるといった概念を捨て、大小限らず価値は統一であると考えました。さらに3センチ程度の大きい(太筋)シラスが売場に並んでいても、消費者はそれが大きいとは思わず、食材として十分に活用できるであろうと結論づけました。
これを全国800店舗規模のある食品スーパーでシラスごはん弁当として販売し、さらに飲食店ではスパゲッティと和えて提供していただきました。結果的には大きいシラスを使用したことで、見栄え的にも存在感・インパクトがあり、利点を見出すことができました。

3、SDG'sのマーケットへの浸透
今や農産物の訳あり商品は通販にも浸透していますが、水産物は物価高騰や原料高騰の時代にある今こそ、未利用魚、低利用魚、フードロスの活用が好機ではないかと考えています。こういった考えこそSDG'sの観点にもつながっていきます。
そもそも未利用魚はなぜ使えないのかと突き詰めていくと、意外にも具体性がないものです。このように“なぜと考える”ことから始めるのが重要で、【SDG's】が当たり前となった時代に、水産業界でもできることは必ずあるはずと考えます。
これからは、【SDG's】の観点からの社会価値、環境価値を新たに加える時代といった創意工夫ができる時代へと移り変わっていくと予想していますので、これらを踏まえ、今後の商品提案にお役立てください。

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