令和6年9月3日、「東北復興水産加工品展示商談会2024」において、「繁盛店バイヤーが欲しいと思う商品の条件とは」と題したセミナーが開催されました。 飲食店でどのような業態・商品開発を行っているか、飲食店バイヤーがどのような商品を求めるか等についてお話しいただきました。
当社は1997年に千葉県市川市に1号店となる「くいどころバー一家 本八幡店」をオープンして以来、1都3県に飲食店事業、ブライダル事業、レジャー事業を展開しています。コロナ禍の影響もありましたが、今年度末には94店舗にまで拡大予定で、過去最高の売上高を見込んでいます。 主力となる飲食事業では、“第二の我が家” として温かい手作り料理とおもてなしサービスを提供する「こだわりもん一家」のほか、「屋台屋博多劇場」、「大衆ジンギスカン酒場ラムちゃん」、「韓国屋台ハンサム」、「にのや」など様々な業態があります。 ブライダル事業では、東京タワーが一望できるチャペルと4つのバンケット(宴会場)とレストランを備えた婚礼施設「The Place of Tokyo」を2012年から展開しています。
飲食店で提供されるメニューは大きく分けて4つあります。初めて来店されるお客様向けの「グランドメニュー」、季節のおすすめを提供する「旬彩メニュー」、料理長がその日の仕入れを見て考える「本日のおすすめ」、不定期で提供する「フェアーメニュー」です。 食には「はしり」「旬」「なごり」があり、特に季節の変わり目の「はしり」を提供することで、季節の移ろいをお客様に感じていただきたいと考えています。そのため、「旬彩メニュー」は、ではその名の通り「旬を彩る」ような新しいメニューを、前期と後期に分けて年8回、45日サイクルで提供しています。 メニューを開発するにあたり、「家では食べられない“プロ”の味」や、「季節感が感じられる」ような商品の提供を心がけています。お店の看板メニューやグランドメニューといった既存商品においても、原価調整、生産性向上、お客様の満足度向上といった視点で、少しずつ改善を行っています。 商品開発において大事にしていることは「5つの同じ」です。居酒屋ではアルバイトスタッフも多く、混雑する時間帯がある等の理由から、味がぶれやすくなります。このため、見た①目、②量、③温度、④提供時間、⑤価格を一定にする必要があります。 さらに、「五感・五覚・五触」も大切にしており、“味”はもちろんのこと、“見た目”や“音”といった「シズル感」、混ぜたり千切ったりとお客様自身がその料理を仕上げていただく“臨場感”や“本場感”を提供できるメニュー開発を目指しています。
業態・商品開発を行う際は、独自の「コンセプトシート」(下図参照)を作成し、大きく分けて8つの視点から、店舗のコンセプトに合致しているかを判断しています。
例えば「博多劇場」では、「博多中州の屋台村」をコンセプトとしており、「ターゲット」は男性サラリーマン、「立地」は駅前1.5等地、「客単価」はビール2〜3杯+メニュー2〜3品を想定、「利用動機」は仕事帰りの一杯、「販促」は自社アプリで会員特典を用意、「サービス」は明るく元気で笑顔を大切に、「雰囲気」はスタッフのユニフォームやBGMで彩る等、それぞれの視点からコンセプトを明確にすることで、やること・やらないことを明確に決めることができます。 この他に「顧客セグメント」も重要です。お客様の属性をグループ分けし、それぞれのニーズに合わせて商品・業態を開発しています。「男性サラリーマン」はおつまみのようなスタンダードメニュー、「友人グループ」は皆で取り分けられる大皿メニュー、「男女ペア」はシェアメニュー、「ファミリー」は卵焼き・唐揚げ等のスピードメニュー、「女性グループ」は見栄え・色合いが良いメニューといったように、それぞれの属性を想定することが重要です。当社では独自の「メニュー開発シート」を用いながら、ターゲットとするお客様の属性に刺さるメニューを具体的に考えていきます。
業態によってメニューや仕入れる商品の特徴が異なります。例えば「博多劇場」では、スタッフも若く、料理人の熟練度も高い訳ではないので、メニューの再現性・安定性を確保するべく、仕入れる商品は完成品やPB商品等が主となります。 一方で「にのや」では、経験を積んだ熟練度の高い料理人が在籍しているため、「本日のおすすめ」メニューのような料理長の個性を活かせる商品を提供しており、どちらかといえば1次〜2次加工された食材が求められます。 このように、メーカーが飲食店に水産品・水産加工品をご提案される場合は、業態の特性を十分に押さえつつ、特性に適したメニューをご提案いただくことで、スムーズな商品採用につながっていきます。
これまでお話ししたとおり、飲食店では時代の変化や生活様式の特徴等を意識した業態・商品開発がますます重要になっていくと考えます。 人口減少による「個食化・少人数化」、お店の特性が瞬時に分かる「専門性・専門店」、飲食だけでなく雰囲気で楽しさを演出できる「モノ消費からコト消費」、高齢化による「健康志向」、満遍なくではなく一部消費者の嗜好に刺さるような「ニッチ志向」、店舗での人材不足やDX化を活用した「省人化、セルフ化」等のキーワードは、これから重要となるはずなので、ぜひ飲食店に商品提案される際の参考とされてください。 我々飲食店側はお客様の最終消費に立ち会う立場なので、産地や生産者の“想い”を伝えることこそ重要な意義であると考えます。時代が変わろうと生産者の熱意がこもった素晴らしい食材・商品を、お客様に食べ続けてもらえるような商品・業態開発を目指して参ります。
令和6年9月3日、「東北復興水産加工品展示商談会2024」において、「消費者の時短・簡便ニーズに対応する商品開発を考える」と題したセミナーが開催されました。 組合員へのアンケート調査等を参考とした消費者の現状とニーズ、これからの商品開発につながるヒント等についてお話しいただきました。
簡単な自己紹介ですが、私は日本生活協同組合連合会(以下、日本生協連)で2012~13年に東北支所の支所長、2014~15年に水産部長を務め、現在は「ブランド戦略本部サステナビリティ戦略室」に在籍し、商品開発に関わる支援等を行っております。 今回は、日本生協連としてCO・OP商品にどのような商品を求めているかについて、エシカル消費等の話題も交えながらお話したいと思います。
日本生協連は、各地にある都道府県別・事業種別の生協が加入する全国組織で、主にCO・OP商品の開発と会員生協への供給(卸売)を行っています。CO・OP商品の多くは、日本生協連と各地の事業連合や地域生協が共同開発するもので、年間10万件ほど寄せられる全国の組合員(消費者)の意見を分析しながら、開発・改善を行っています。
組合員は圧倒的に女性の割合が多く、平均年齢は59歳で加入歴では「10年以上」が72%で最多です。特に冷凍食品の利用が多く、商品開発にも力を入れています。
物価高の影響による食費の“節約志向”を意識されている方が全体の88%と大きな割合を占めており、直近1年間は「同じようなメニュー」や「安い食材でかさ増し」して節約を意識した食生活が増えているとの傾向があるほか、“SDGs”や“エシカル消費”といったキーワードへの関心度・認知度が年々上がっています。また、組合員の平均年齢が高いことから、“健康”、“栄養”へも強い関心があります。
このような様々なニーズに対応できるようにCO・OP商品のなかでも “ふだんのくらし”を応援する「CO・OP」、持続可能に配慮した主原料を使用する「CO・OPサスティナブル」、独自基準(素材・原料・産地等)をクリアした「CO・OPクオリティ」等、ブランド(ロゴマーク)が分かれております。
令和5年度水産白書によると、2011年を境に肉と魚の消費が逆転し、それ以降は魚の消費低迷が続いています。これについて、日本生協連の組合員調査では、「魚を購入する理由」として「新鮮な材料が手に入ったから」「肉料理が続いたから」「旬の食材を味わいたいから」等の理由が挙がっており、特に「旬のもの」は魚の訴求において大きなポイントと考えています。加えて、「丸もの」の購入が減少した一方で、「骨取り加工」「フライパン調理」「レンジ調理」といった魚介類の購入も増えている傾向が見られました。
CO・OP商品全体における水産物の割合は、宅配で約20%、生協店舗で数%〜約20%となります。組合員が「おすすめする水産商品」では、「さば」「味噌煮」「骨取り」が挙がっており、実際の売上ベースでも、「骨取りさばの味噌煮」「骨取りさばのみぞれ煮」は、水産商品ナンバー1&2を占めています。
組合員のニーズを汲み取りながら商品開発を行っているCO・OP商品ですが、水産部門では約8割が宅配向けの商品となっています。
生協宅配の特徴は、組合員が紙面カタログかウェブサイトから注文して、週に1回配達される仕組みで、気に入った商品はリピート注文できるように、商品企画(カタログ掲載)は定期的なサイクルで行っています。価格帯は300〜400円台が大半で、そのまま食べられる・レンジ調理・骨取り・骨抜き・殻むき商品が多く、一般的なマーケットと比べて国産原料の割合が高く、SDGsに繋がる水産エコラベル商品や、サバ等の青魚とタラ等の白身魚が多くラインナップされています。また最近では、カットされた食材と調味料がセットになっている「ミールキット」が、家庭にある野菜を加えて簡単にかさ増しやアレンジができることから利用が増えています。
生協宅配で求められる水産商品のポイントは大きく分けて3つです。
一つ目は、「美味しさ」です。「美味しさ」とは商品の味の他、カタログ上でそのおいしさや特徴をうまく表現できていること。カタログの説明書きと実際の商品が乖離している場合は当然のごとくリピートされません。組合員から「カタログで見た感じより実際の商品は小さい」等の厳しい意見をいただくこともあります。実際の商品を手に取って確かめることができないカタログ販売は、特に伝え方を工夫する必要があります。
二つ目は、「生協のコンセプト」にあっていること。味はもちろん、「生協の組合員・消費者」のくらしや声に寄り添い、利用シーンまでイメージされたような使いやすい商品が必要です。最近の事例では、昨年秋に開発した「骨取りぶりのみぞれ煮」がよく売れました。味のよさだけでなく、国産原料や骨取りであることが人気の理由と考えています。また、1990年に発売した「ふっくらしらす干し」は、「塩分が気になる」といった組合員の声を受けて、2010年代後半に食塩不使用と減塩タイプを開発しました。従来商品も組合員の需要に合わせてバリエーションを増やすことで、健康を気にする方や、子育て世代の方まで需要が広がります。 また、SDGsへの取り組みに対応した商品であることも「生協のコンセプト」のひとつです。特にエシカル消費(=買い物をする特に自分視点だけでなく、環境や社会等、他社への視点をプラスすること)に対応するため、持続可能な水産エコラベル商品(MSC、ASC、MEL、BAP、RFM)や、震災復興等を含む地域貢献といった視点に基づいた商品の開発・販売について、全国の生協と共に取り組んでおります。現在、水産エコラベル付き商品は、水産物を主原料としたCO・OP商品の供給額の17%(小売価格110億円相当)を占めており、2030年までに50%を目標に掲げて取り組みを強めていく予定です。
三つ目は、消費者にとって“ふだんのくらし”において利用しやすいリーズナブルな価格、おいしさと比例して納得できる価格であることも重要視しています。
CO・OP商品は何といっても「組合員さんのふだんのくらしに役立つ商品の開発」が一番のモットーです。それに加え、「安全と安心を大切に」「想いをつなぐ(生産者の顔が利用者にまで見える商品を作る)」「地域や社会、環境に貢献する」などの価値も大事にしながら、これからも組合員やメーカーの皆様とも協力し、より良い商品を提供し続けていきたいと思っております。
令和6年9月3日、「東北復興水産加工品展示商談会2024」において、「被災地の水産業の復興-現状と今後の課題について」と題したセミナーが開催されました。 東北の水産業がこれからどのような販路開拓を行うべきか等について、それぞれの視点からお話しいただきました。
水産業は現在、漁業者の人口減少や高齢化が顕著に進行し、海洋環境の変化によって魚獲量の減少が進行する等の様々な問題に直面しております。とりわけ東北では、流通拠点が徐々に整備されているものの、まだ復興が盛り上がりを見せていない状況にあります。 本セミナーでは、東北の水産業全体を今後どのように盛り上げていくのかといった視点で、議論を交わしつつ、講演を進めて参ります。
私自身もこれまで三陸の復興に係る様々なプロジェクトに携わって参りましたが、一時的な支援や売り方の変更だけでは、短期間の効果は見られるものの、継続的な効果は見込めないと考えております。温暖化等によって様々な問題がある中で、新たな独自性や、新たな挑戦といった、三陸におけるこれからの水産業の夢を実現させることが課題と考えています。 本日は、水産業で様々な指導を行っている講師の皆様にお集まりいただき、それぞれの視点から見た、東北の水産業の在り方とこれからについて語っていただきます。
消費者の食に関する動向は日々変化しています。令和6年1月の消費者動向調査(日本政策金融公庫)によると、現在の3大志向は①健康志向(45.7%)、②経済性志向(40.8%)、③簡便化志向(38.2%)となっており、これらは上昇傾向で、手作り志向、国産志向、外食志向はやや低下傾向にあります。世帯別の食料品購入状況は、単身〜核世帯が6割を占めています。 3大志向のなかでも健康志向は、30代を除く全ての世代で上昇しているため、その点を念頭において商品開発を進めることが重要です。経済性志向では、割高でも国産品を選ぶという方々が依然として多いですが、最近の物価高騰の影響で輸入品が選ばれる場面も増えてきており、この価格差を埋められるような国産品の商品力が問われている状況です。
また水産物の需要・消費をめぐる動きについて、令和5年度の水産白書(水産庁)によると、水産物の消費量が年々減少し、肉類が魚介類を上回る状態が続いています。魚介類をあまり購入しない理由として、「魚介類は価格が高いから」「魚介類は調理が面倒だから」といった声があがっており、価格が手頃かつ調理簡便であることが求められています。 逆に魚介類を購入する理由としては、「健康に配慮したから」という声が最も多くなっています。実際に魚にはDHA、IPA、EPA、タウリン、アスタキサンチンといった様々な栄養素が含まれており、肉類・乳類・豆類と比較してもタンパク質の含有量が多く、脂質が少ないため、健康意識に時流適応した食物であると言えます。
小売店は店舗戦略として、大きく分けて3つの役割を持った商品を扱っています。 1つ目は「集客商品」で、日頃使う商品でどちらかというと賞味期限が短い商品を指しており、集客のために時には大幅な値下げを行っています。 2つ目は「収益商品」で、主に弁当・惣菜のような自ら値付けができる商品を指しており、ここで収益性を高めています。 3つ目は「品揃え」で、賞味期限の長い加工食品を指しており、回転率が低いからこそ、商品棚で店舗の世界観を作りやすくなります。 この3点を抑えた商品提案やプロモーションを行うことができれば、小売店への販路拡大、販路開拓に繋がります。
食品製造業は用途拡大によって売上を積み上げております。食品市場は安定期でありながら飽和状態が続いており、多様化する趣味嗜好のお客様に選ばれるためには、他商品との差別化が必要です。さらにお客様の趣味嗜好はもちろん移り変わりもあるため、1年に1回程度、商品のブラッシュアップを行い、「創って・作って・売る」というサイクルを繰り返しながら、結果(売れた・売れない)に応じた原因を考察し、ふたたび「創る」という工程に立ち戻ることで、用途を拡大・転換に繋げることが必要です。
令和4年3月に閣議決定された「水産基本計画及び漁港漁場整備長期計画」では、「海業(うみぎょう)」という言葉が盛り込まれました。「海業」とは、食品に限らず、インフラ・伝統・景観まで含んだ地域資源を最大限に利用することをコンセプトに、漁業や漁港を核とした地域経済の活性化を目指す事業です。 これからインバウンドによってお客様は増え、ビジネスチャンスは広がっていきます。これまで消費地に獲れた魚を送っていた「漁業」から視点を変えて、消費者を陣地に引き込んでレジャーまで提供する「海業」に変えることで、ビジネスチャンスを獲得する時流適応を行うことが重要です。
<ファシリテーターからの一言> 消費者のトレンドを分析し、戦略・戦術をたて、自社の強みを売っていくことが重要だと感じました。また、これまでは漁業・水産加工業と点が分かれていたものを、海業(うみぎょう)という面で繋ぎ、双方向の展開で水産業全体を盛り上げていくといった視点を持つことの重要性をご提案いただきました。
水産加工業の皆様のなかには、これまで商品開発やパッケージの改善、道の駅やネット等での販売、展示会への出展等、様々な努力をしてきたもののそれでも売れない…とお悩みの方がいらっしゃるかもしれません。このような場合の多くは、売る商品、原料、販売対象、売るための努力、注力の仕方、何かが間違っていた可能性があります。 そして一次産業(漁業・漁業者)の皆様は、あらゆる環境の変化によって産地の価格差が広がることも懸念されています。販売力のある仲買を育てたり、漁協単位で他地域と販売業務提携を進めたりすることで、強い産地として生き残っていく必要があります。 加工業者の皆様、一次産業の皆様にとって、今何を変えるべきかをご紹介いたします。
・カテゴリを考える マーケットの縮小が明白なのに、長年扱ってきた商品に固執しているケースが多く見られます。もちろん最後まで生き残っていれば素晴らしいことですが、ほとんどの場合は「安売り同業者」が必ず出現し、価格競争はどんどん激しくなります。これまでやってきたことを捨てて、転換する勇気も必要です。
・味付けを考える ラーメンの背油のように、大脳が美味しさを強く感じる旨味成分に慣れてしまった消費者は、魚本来の旨味だけでは満足しなくなっています。人間がどのように美味しさを感じるのかを研究し、知識・理論に基づいた味付けを考えることで、もっと美味しい商品を創り出すことが可能です。
・狙う原料を考える 漁獲量が急激に減った原料を待ち続けても戻ってくる保証はありません。これから様々な要因で環境は変化するため、現在獲れているものをすぐに商品化してすぐに販売できる対応力を培うことが重要です。
・差別化戦略を意識する 皆が目をつけている原料を追いかけても最終的には大手企業に奪われる可能性もありますので、できるだけニッチな分野でトップを狙いましょう。差別化戦略を徹底的に意識し、他社がまだ開拓していない領域を見つけ、早々に着手することで、儲かる期間をより多く確保できます。
・「獲って売る」から「育てて売る」へ 生産者はこれから間違いなく減少し、これによって魚価(収入)は上がりますが、それでも漁業就労者は増えないと思った方が良いでしょう。アニサキスによるアナフィラキシーショック等、天然魚ならではの危険性も注目されており、もしかすると「天然魚を使わない」時代が到来するかもしれません。「獲って売る」から「育てて売る」養殖・畜養の検討を進める必要もあります。
・漁協・漁連単位で生産者全体の稼ぐ力を増強する 生産者・漁師単体で販路を拡大させることは非常に難しく、これまでの成功事例も非常に少ない状況です。漁協(漁連)として生産者全体の収益力を上げていくという考え方にシフトしていく必要があります。
商品の完成度を求め過ぎても、販売数や利益増加に繋がらなければ努力は無駄になりますので、完成度は75点程度で十分です。販売力さえあれば商品は売れます。 ではどのように販売力を培えばよいか?そのポイントをご紹介いたします。
売る相手・場所を考えましょう 気に入った商品のポイントをお客様(消費者)に伝えてくれるようなバイヤーを見つけ、一緒に商品を育てていくことが大切です。商品をただ並べただけで「売れない」というお店は少なくなく、結果的に安さで売るしかなくなります。そういったお店を狙うのではなく、販売力があるところと組むことが重要です。あるいはPOPを提供する等して、相手の売る力を育てることも必要です。
売るための努力を培いましょう 満足に営業できる会社はほとんどありません。商品を売るためにやれることは全てやってください。そして成功パターンができたら、それを極め、新たな提案を行う営業力を培うことが必要です。
宣伝するチャネルを選定しましょう 自分でSNSを運用して無料で集客するという時代は終わりました。今やSNSは労力をかけても1000社に1.5社しか、時間対効果・費用対効果が見合っていないと言われています。情報社会に埋もれないために、広告宣伝にしっかりとお金をかけ、その道のプロと組みながら広告戦略を立て、効率的・効果的に宣伝することが重要です。
固定概念を捨てて生産性を上げるための最短手段はIT化です。とはいえ、いきなりAIを導入するということではなく、まずはPCで情報集約・管理することや、LINEで情報共有する等、できることから始めてください。 それからすべて自前でやるという考えを変えることも必要です。外注をうまく使うことで業務は効率化できます。 そして設備投資よりノウハウを重要視しましょう。機械・設備にいくら投資しても「どのように商品開発して、どのように販売するのか」といったノウハウが無ければ商品は売れません。このノウハウにお金を使うことも重要です。例えばコンサル活用は、経営・時代に合わせた改革の外注とも言えます。ノウハウさえあれば変化がチャンスへ生まれ変わります。
<ファシリテーターからの一言> まさに逆転の発想であり、自社の強みと弱みを分析したうえで経営することが重要と感じました。鈴木様ご自身も、赤字転落の危機を免れ、経営努力によって年商50億まで会社を盛り立てられたという経験をお持ちとのことで、貴重なお話ばかりでした。
鈴木氏(座長): 海洋環境の変化によって、三陸でも漁獲量や魚種が大きく変化しています。原料確保は今後の重要課題になると考えられますが、このような環境下で、被災地水産業の未来を考えるにあたり、水産加工業がこれからどのような取組が必要となるか、それぞれの視点からご意見を伺わせてください。
細川氏(パネリスト): 私はダイエーとヤオコーで水産バイヤーを経験し、現在では水産アドバイザーとして、水産加工業の皆様に販路開拓等のアドバイスを行っています。 私がバイヤーになり立ての頃の話ですが、母親が大きなほっけの開きを切ってから焼いていた光景を見て、折角の開きをなぜ…と思いました。しかし開きをそのままの姿で焼くというのは魚屋の固定概念であって、消費者は頭・しっぽ・中骨はない方が調理しやすく、食べやすい訳で、実際に開きを切って販売したところ、それが飛ぶように売れたことを今でも覚えています。 それから北海道でバイヤーをしていた頃、道産の生ホタテを連日のように扱っていましたが、その時は何も考えずに安さだけで販売していました。でも今思えば、どのように調理するか、そういった提案ができていればもっと売れたと思います。水産加工業の皆様にお伝えしたいことは、家庭で自ら調理してみて、わずかなことに気づき、そしてちょっとした工夫が売れる商品を生むこともあります。是非そういった視点を持つことが重要であると考えています。 最後となりますが、もしスーパーに営業するのであれば、足しげく通ってバイヤーと関係を築けるような営業を心がけてください。但し社長自らが赴くものではありません。社長は社長業に専念して、専任の営業マンを抱えましょう。そうすることできっと成果に繋がると考えます。
五日市氏(パネリスト): 私は商品開発のプロデューサーとして、東北を拠点に、日本全国にある食品加工業の商品開発をサポートしておりますが、日頃どのような商品開発を心掛けているかについてお話しいたします。 東北ではこれまで水揚げされた魚が獲れなくなっている一方で、新たに水揚げされている魚も増えています。このような魚は食文化(調理方法)が当然ない訳で、私自身は食文化のある地域から学びながら、手軽に食べられるような商品の開発を心がけております。 なかでも冷凍食品がまだ伸びるであろうと予測しており、大手食品会社の商品展開も十分でないことから、中小企業にもチャンスがあると考え、商品開発を進めているところです。また飲食店や宿泊施設では人手不足が課題となっておりますが、簡単に調理できる業務用商品で、なおかつ地域性のある食材を探されているとのお話を最近よく耳にしますので、こういった商品開発を進めています。商品開発の参考になれば幸いです。
伊藤氏(パネリスト): 先ほど「海業」について触れましたが、消費者に最も水産業の強み・魚の価値を伝えるためには、自分の陣地(産地)で獲れたて、出来たての魚を食べていただくことであり、すなわち産地はこれから消費地にもなっていかなければならないと考えております。そのために産地がやるべきことは、消費者に体験価値を提供できる仕組みを考え、新しい消費者行動を起こさせることがこれから求められていくのではないのでしょうか。
鈴木氏(座長): ありがとうございました。様々な角度からのお話を伺いましたが、被災地水産業がこれから競争力を高めるにはもっと新しいことに挑戦しなければならないと感じさせられました。 但し個人単位ではできることも限られている訳で、国・復興庁・水産庁と一体となって三陸に新しい夢を創造し実現することが求められているのではと考えます。イノベーションなき復旧・復興は衰退しますので、このまま終わりではなく、何かしらの改革を行っていくことが求められています。
令和6年9月4日、「東北復興水産加工品展示商談会2024」において、「福島第一原発事故後の水産物の検査体制について/ALPS処理水海洋放出に係る取組について」と題したセミナーが開催されました。 福島第一原発事故後より行われている放射性物質に関する検査と、ALPS処理水海洋放出の影響と対応等についてお話しいただきました。
平成23年の福島第一原発事故直後から、福島県内の漁業は操業を自粛しておりましたが、平成24年6月から試験操業という形で出荷制限されていない魚種の操業と販売を再開、令和3年4月からは本格操業に向けた移行期間として水揚量の拡大を図っています。 令和5年度時点の水揚量は、震災前の平成22年度と比較して25.6%まで回復しています。
福島県産魚介類の放射性セシウム検査は、福島県が行う法的な検査と、漁協による自主検査の2重体制となっています。
福島県の公的検査 出荷制限魚種も含めて検査が行われており、国の基準値である100ベクレル/kgを超えた場合は、国から出荷制限が指示され、基準値を安定して下回るまでは出荷制限が続きます。平成26年以降に基準値を上回ったのは4例のみで、平成29年以降は検体の99%が国の基準値の1/10相当となる10ベクレル以下/kgとなっています。なお海の魚ではクロソイだけが現在も出荷制限が続いています。
漁協の自主検査 出荷予定の全魚種を対象に、水揚げ日ごとに1魚種1検体以上で検査が実施されています。国の基準値よりさらに厳しい規制値を設け、基準値50ベクレル/kgを安定して下回るまで出荷を制限します。
ベクレル:放射能の単位。数値が大きいほどたくさんの放射線が放出されている シーベルト:人が受ける被ばく線量の単位。数値が大きいほど人体への影響が大きい
自然からの被ばく量は、地域によって差があり、例えばフィンランドでは年間6ミリシーベルトに対して、日本では年間2.1ミリシーベルトとなっています。 国際放射線防護委員会では、世界各地の自然からの被ばく量の地域差を踏まえた上で、誰でも受け入れ可能な被ばく量の目安を、「年間1ミリシーベルト」に設定しており、日本政府はこの基準に合わせて、福島第一原発事故による食品からの年間被ばく量を1ミリシーベルト以下に抑えるという目標を設定しました。但し、年間1ミリシーベルトを超過したから即危険ということではありません。 厚生労働省(令和6年度からは消費者庁)は、実際に流通されている福島県産および近隣県産の食材をサンプルとして測定しています。平成6年の検査結果では、食品中の放射性セシウムから、人が1年間に受ける放射線量は最大0.001ミリシーベルトとなっています。
食品中の放射性物質への対応(厚生労働省)
食品の基準値と摂取量調査(消費者庁)
精密分析 水産庁では、令和4年度からトリチウムのモニタリングを開始し、検出限界値を0.4ベクレル/kg程度とした精密分析を行っています。これは国際的にも認められている分析方法で、結果が出るまでに1カ月〜1カ月半程度を要します。 令和5年7月時点で、449検体の分析を実施し、魚類37種、貝類7種、頭足類4種、甲殻類2種、海藻類4種等について分析しています。最も離れた沖合の地点では、ビンナガを採取し分析しています。
迅速分析 生産者や消費者にできるだけ早くモニタリングの結果を提供すべく、ALPS処理水放出が開始された令和5年度より、検出限界値を10ベクレル/kgとした迅速分析を開始しました。これにより検体採取の翌日〜翌々日に結果を公表することが可能となりました。 令和5年8月から開始し、処理水の放出期間中は週4回、放出していない期間は週1回分析を行っておりますが、こちらもすべて検出限界値未満となっています。なお、ALPS処理水の放出前と放出後で分析結果に変化は見られませんでした。
以上の検査結果については、すべて水産庁のホームページで公表しており、中でも放射性セシウムの検査結果は原発事故直後からの検査結果すべてを確認することができます。
水産物の放射性物質調査の結果について(水産庁)
令和5年8月より、これまで8回のALPS処理水の海洋放出が行われておりますが、海洋放出する際は汚染水をALPSで浄化処理しており、トリチウム以外の核種が十分に浄化された状態で海洋放出しています。この取組は、海洋放出後の令和5年10月と令和6年4月にIAEA(国際原子力機関)の職員および専門家が訪日され、レビューミッションという形で検証が行われており、ALPS処理水の放出が安全に行われていることが確認されています。海洋放出時のトリチウムの濃度条件は1,500ベクレル/リットル未満になるよう希釈されています。これまでのトリチウムの迅速分析結果では、1回目が最大10ベクレル/リットルで、最も多い数値となった5回目で29ベクレル/リットルでした。なおWHOによる飲料水に含まれるトリチウム濃度の基準は10,000ベクレル/リットルであることから、IAEA(国際原子力機関)の判断により、「人体環境に影響がない程度」で放出されております。
安全性が保たれた放出にも関わらず、中国をはじめとする一部の国・地域で、科学的根拠に基づかない輸入規制措置が行われています。そのため、首脳会談や事務レベルでの協議による輸入規制撤廃に向けた働きかけを継続するとともに、漁業の将来に対する不安や懸念を払拭するための対応が必要となります。これらのALPS処理水に係る対応は、日本政府が全責任を持って水産業を支援していくことが「廃炉・汚染水・処理水対策関係閣僚等会議」において確認されています。
また、経済産業省および日本政府では、風評影響への対応として福島・宮城・岩手各地で説明会や意見交換会を実施する他、各種イベントに出展した安全性の広報活動、国内の販路拡大を目的に飲食業界等と連携したキャンペーンを実施しています。 このほか、水産加工業をはじめとする水産業者への応援・支援をするべく、「水産業を守る」政策パッケージを掲げ、「国内消費拡大・生産持続対策」「風評影響に対する内外での対応」「輸出先の転換対策」「国内加工体制の強化対策」「迅速かつ丁寧な賠償」という5つの対策に取り組んでいます。 詳細は経済産業省ホームページをご覧ください。
「ALPS処理水関連の輸入規制強化を踏まえた水産業の特定国・地域依存を分散するための緊急支援事業」に関する予備費が閣議決定されました(経済産業省)
令和6年9月4日、「東北復興水産加工品展示商談会2024」において、「外食から期待されるメニュー開発パートナーのQCD+F 〜セラー・バイヤーの関係を越えて〜」と題したセミナーが開催されました。
株式会社グルメ杵屋グループでは、「杵屋」「そじ坊」といったうどん・そば店をはじめ、約50ブランド400店舗を展開する「レストラン事業」を軸に、ハラル対応が強みの「機内食製造事業」、数十億円の売上を誇る日本有数の「おせち料理製造事業」、大阪の繁華街・なんばから徒歩圏にある「大阪木津市場」の他、海外へのフランチャイズ展開や、日本語学校の運営と幅広い事業を行っています。
今回は、飲食店、機内食事業、冷凍弁当・おせち料理事業、水産地方卸売市場の開設者 兼 荷受と幅広く展開する立場から、外食バイヤーが水産関連事業者の皆様に期待することについてお話させていただきたいと思います。
「ウォンツ」とは、 顧客が自らのニーズを満たすため、特定の商品やサービスを具体的に求める状態で、直訳すると「欲求」ですが、顧客が抱える具体的な課題を商品やサービスレベルで解決する「手段」と理解すると良いと思います。また、ウォンツは下記3つに分類されます。
ニーズを満たす「具体的な」商品やサービスなどを求めている状態。 例)靴が欲しい
基本ウォンツに、「〇〇な」などの条件が追加され、絞り込まれた状態。 例)雨でも水を通さない靴が欲しい
顧客にとって、基本ウォンツ満たす商品等なら「当たり前」に備えている前提。 例)靴であればサイズが揃っており自分に合うものを選べるだろう
「ニーズ」とは、 顧客が何らかの課題や悩み事を抱えて、モヤモヤするなど満たされていない状態です。直訳すると「必要」ですが、「目的」や「〇〇したいこと」と理解すると分かりやすくなります。 また、ニーズは下記2つに分類されます。
顧客自身が具体的に自覚をしている「〇〇したいこと」です。「〇〇することで」問題解決する「目的」がはっきりしています。 例)梅雨の季節の外出を快適にしたい
顧客自身も明確な自覚がない「〇〇したいこと」です。何が「したいことか」自分で認識できていない状態のため、まずは顕在化させることが肝要です。
取引を成功させるには、バイヤーの「ウォンツ」と「ニーズ」のどちらも理解しておく必要がありますが、バイヤー自身から抱えている課題や悩みごと(=ニーズ)を説明してくれるとは限りませんし、本人も気付いていない「潜在ニーズ」が隠されているケースもあります。よって商談時は、バイヤーがどのような課題や悩みごとを抱えているかを推測しつつ、「潜在ニーズ」を顕在化させることができれば、「この人に相談したら自分たちの課題を解決してくれる」とバイヤーからの信頼につながります。
次に外食チェーンにおける「ウォンツ」と「ニーズ」の例を見てみましょう。
一例ですが、バイヤーが「新しいメニュー」を求めているケースにおいて、顧客のリピート率を上げるためにメニューのマンネリ化を解消したいという「顕在ニーズ」があるかもしれません。一方で、人手不足のため店内調理を削減できるメニューを増やしたいという「潜在ニーズ」を抱えている場合もありえます。対話を重ねることで、顕在ニーズだけでなく潜在ニーズを感知し、解決策につながる商品提案をすることも大切です。
外食業界では現在、人手不足が課題です。そのため、いかに店内調理の手間を削減しつつ、かつ適切な値段で、安定した味、安全な商品を提供できるのかがカギとなっています。この解決策を提供できる事業者こそ、活躍の場が増えるものと思われます。
メニュー開発までは、以下のとおり、大きく分けて6つのステップで進行します。
多くの外食店では、「グランドメニュー」と「季節メニュー」があります。 「季節メニュー」では春・夏・秋・冬の四季以外に店舗ブランドやコンセプトによって初夏・盛夏・年末年始等の細分化したメニューを展開するケースがあり、おおよそのスケジュールは、4〜5カ月前までに「コンセプト立案」、3〜4カ月前に「メニュー開発」と「原価計算」、2〜3カ月前には「レシピ作成」、1〜3カ月前に「調達先決定」を踏まえて、ようやく新メニューの発売となります。
最も重要となるのは、意思決定者の存在です。例えば「コンセプト立案」に携わるのはマーケティング部門なのか、営業企画部門なのか、商品企画部門なのか、「調達先の決定」はバイヤーとなるのかといったように、意思決定者を理解しておく必要があります。 相手が商品企画部門なのかバイヤーなのかによって、1年後の話をしているのか、2〜3カ月先の急ぎの話をしているのか、スピード感は大きく異なります。現在商談している相手にどんな権限があり、どんな課題を抱えているか、どんな時間軸で物事を決めようとしているのか、どの部門に所属している人なのかを商談時によく確認しておきましょう。
商品開発やプロジェクト進行等で重視されるのは「QCD+F」です。
はじめにQ(=クオリティ)は商談で最も優先されるポイントとなります。商談資料に品質・商品性・安全性を記載する他、梱包単位・内容量・パッケージ等まで詳細に記載されていれば、現場(店舗)でも使いやすく、なお望ましいです。
次がC(=コスト)やD(=デリバリー)です。商談時にはすぐに金額・配送条件を提示できない場合もありますが、バイヤー側目線では条件を提示された方が判断しやすく、時間をかけずに成約に至り、次の商談に繋がりやすくなります。
そして最後にF(=フレキシビリティ)です。例えば既存商品であっても、相手に合わせて味付けや入数等をカスタマイズできるといった柔軟性や対応力を強調できれば、他社との差別化を図ることができます。
このように商談窓口であるバイヤーの「ウォンツ」と、その背景にある他部門を含めた「ニーズ」を意識し、サンプル提供と一緒に柔軟性・対応力がわかる資料提案を繰り返し行うことが商談成立への近道です。
これまでの説明を踏まえて、ぜひ今後の商談に活かしていただきたいと考えておりますが、外食チェーンと取引するにあたり、いきなり「グランドメニュー」から取り組むのは、お互いにとって大きな負担です。そのため、まずはお互いを理解する期間として「季節メニュー」から始めることをお勧めします。自身(メーカー側)は何ができるのか、相手(バイヤー)は何を求めているのか、どういったところに融通を利かせればいいのか、そういった細かいところを探る期間を設け、互いに理解し合うという点で、まずは「スモールスタート」を目指しましょう。
令和6年9月4日、「東北復興水産加工品展示商談会2024」において、「三陸・常磐ものネットワークによる消費拡大の取組と可能性」と題したセミナーが開催されました。 「三陸・常磐ものネットワーク」の取り組み紹介と、三陸・常磐ものの消費拡大の可能性等についてお話しいただきました。
「三陸・常磐ものネットワーク」は、原子力安全研究協会と経済産業省が主幹となり、ジェイアール東日本企画とアール・ピー・アイが共同で事業の運営を行っております。はじめに事業概要とこれまでの取り組みについてご説明させていただきます。 「三陸・常磐ものネットワーク」(以下、本事業)とは、2023年8月のALPS処理水海洋放出による風評被害影響への対策と、三陸・常磐の水産物のおいしさと安全性の理解を深めつつ、継続的に需要回復や販路拡大を支援することを目的としたプロジェクトです。 三陸・常磐の水産事業者159社と、バイヤーをはじめとする民間企業(以下、参加企業)1,163社が参加する日本最大級の水産プラットフォーム「魅力発見!三陸・常磐ものネットワーク」を軸に活動しており、主に参加企業が運用する社食・弁当・キッチンカー・ECサイト等に、三陸・常磐もの水産物の導入を働きかけ、マッチングまでの支援等を行っております。 これまでの取り組み事例は、日本航空様、アマゾンジャパン様、埼玉りそな銀行様、ヤマト運輸様、ENEOS様、セブン&アイホールディングス様、パナソニックグループ様等の参加企業様にご協力いただき、社員食堂やキッチンカー等に三陸・常磐ものをつかったメニューを提供いただきました。
当社は本事業のマッチング部門を担当しており、生産者側の商品開発をサポートしつつ、参加企業と商談するまでの支援を行っております。今回は当社が実際に支援をおこなった企業のうち3社の取り組みと成果をご紹介させていただきます。 1社目は、福島県いわき市でサンマの加工品を扱う水産事業者です。これまで小売向けの「さんまのみりん干し」を看板商品としておりましたが、近年のサンマ不漁によって安定した商品供給ができなくなり、原材料を国産サバに変更して開発を行いました。当初は小売り向け商品のみでしたが、本事業を機に業務用商品を開発した結果、社員食堂への導入が決まり、現在では「サバのみりん干し」として提供されています。 2社目は、福島県いわき市でタコの加工品を扱う水産事業者です。特に2024年はタコの水揚げ減少により深刻な状況にありましたが、少量のタコとあおさ等の他の食材を組み合わせたポーションタイプの「タコとあおさのりの海鮮ぶっかけ丼」を開発した結果、その日どれだけのメニューが提供されるか把握しにくいという社員食堂の特性から、流水解凍で簡単に調理できることが評価され、取引に繋げることができました。 3社目は千葉県銚子市でマグロの加工品を扱う水産事業者です。本事業をきっかけに社員食堂用に千葉県産の原料を使用した「まぐろカツ」の110gを商品開発したものの、弁当製造との商談で容量が多すぎるとの意見があったことから、20gのミニサイズを開発に至りました。このように販路先のニーズに合わせてフレキシブルな対応が必要であることに気づくきっかけとなりました。 また、この三陸・常磐ものネットワークを通じて、参加企業に対しメニュー提案を繰り返し行うことで、水産加工業者の方々の提案資料への意識が上がり、資料作成力も向上したものと考えております。さらに、品質管理に係る書類提出も繰り返し提出が必要になるため、衛生管理や品質管理に向き合う場面も多く、意識の向上にもつながりました。
本事業を活用した立場として、どのような効果を感じられたかについて、お話ししたいと思います。 当社は福島県相馬市で2007年に創業し、前浜(原釜港)で水揚げされた魚を加工販売しておりました。しかし2011年の東日本大震災で津波にて工場が全壊。販路もすべて失い、原発事故の風評被害にも見舞われたため、宮城県名取市へ移転して営業を続けています。 現在は震災以前と全く違うビジネスモデルになっていて、量販店や飲食店向けに鮮魚加工やフライの粉付け加工等をおこなう「委託加工事業」とワンフローズン加工の商品が売りの「EC事業」が会社の柱です。この他に「飲食店事業」として海鮮丼のお店を経営しています。
本事業に参加した一番のメリットとしては、これまで知らなかった市場を見ることができた点です。ECや社員食堂と繰り返しマッチングを重ねるなかで、広いマーケットとニーズを獲得するためにはどのような商品開発・改良を行うべきかを徐々に理解できました。 一例では、ECサイトでも骨取り切り身のニーズが高いことから、30g×20枚入りの骨取り銀鮭切身を開発したところ、弁当に使いやすいと評価いただき、ヒット商品になりました。また魚の端材を原料に醤油漬けした海鮮丼の素は、価格も抑えられて、小規模でも扱いやすいことから、社員食堂に扱っていただくことになりました。 一般的に社員食堂は、毎日食べる→価格を抑えたい→ありふれた食材→感動はないというイメージですが、国産原料商品で勝負した結果、価格よりも品質がよい・驚きがある・美味しいものも選んでいただけるということが分かりました。 本事業と少し逸れますが、商品開発の重要性に触れたいと思います。水産業は現在、水揚量の減少・変化といった課題に直面しておりますが、当社はどんな魚が取れても売れる商品を作ることができる力を磨くことがこれから重要になると考えております。 一例ですが、当社では未利用魚とされてきた「カナガシラ」に着目。高級魚のホウボウと大差ない上品な味であるものの、歩留まりが悪くて小骨も多いことから試行錯誤した結果、一口サイズのフライ商品の開発に行き着きました。小骨を抜かずに小骨を避けて魚体をカットすることで人件費を抑え、ネームバリューが低いことから原料名を白身魚と表示させる等の工夫を行ったところ、扱いやすい一口サイズということで飲食店等の利用も増えています。このようにどのような魚であっても、マーケットインとプロダクトアウトを意識しながら粛々と商品開発をすれば可能性は開けてくると考えています。
これまで説明があった本事業取り組み結果を踏まえ、今後に期待される点をまとめます。 まずは三陸・常磐ものの消費促進を目的とした今回のキャンペーンにより、様々なメニューが提供されたことで三陸・常磐の水産物の認知度向上に繋げることができました。そして社員食堂等は一般的にリーズナブルな原料が好まれる傾向にあり、決してロットは多くないことから三陸・常磐ものを扱うことでメニュー単価もあがってしまうのではとの懸念もありましたが、品質を評価いただき、結果的に価格が上がっても注文数は増えることができました。参加者からも「似たようなメニューが多いなかで新たに日替わりメニューを開発することができた」「普段ないメニューなので好評だった/完売した」「今回を機に新たな取引ができた」等のお声をいただくことができ、完売する事例もいくつか見られております。そして、本事業と連携することで、水産加工事業者に社員食堂という新たな販路を見いだすきっかけをつくることができました。 一方で主要魚種の不漁によって原材料の確保が難しい状況が続いています。対策として原材料の産地や魚種を変える、調達できる多品種の原材料を活用する等が考えられますが、原材料が変わると商品・販路・価格も大きく変わってくることから、多様な販路を有する本事業を活用いただくことで、水産加工業者も新たしい可能性にチャレンジしやすいものと考えます。 「三陸・常磐ものネットワーク」では、このような活動を継続することで、「三陸・常磐もの」の販路開拓に繋げ、引き続き魅力発信と消費拡大を推進して参ります。