令和8年2月26日、「第23回シーフードショー大阪」において、「福島第一原発事故後の水産物の検査について」と題したセミナーが開催されました。 本セミナーでは、福島第一原発事故およびALPS処理水海洋放出に係る検査体制とそれらを踏まえた水産物の安全性等についてお話いただきました。
平成23年の福島第一原発事故直後、福島県内の漁業協同組合はすべての沿岸漁業および底引き網漁業の操業自粛を余儀なくされました。 平成24年6月からは「試験操業」として、出荷制限対象外の魚種を対象に操業と販売を再開。以降は対象魚種・海域を段階的に拡大し、令和3年4月からは本格操業に向けた移行期間と位置づけて水揚量の拡大を図っています。 令和7年度の水揚量は速報値で約7,000トンを超え、震災前の27.8%まで回復しており、右肩上がりの傾向にあります。
福島産魚介類は、健康への影響が懸念されている放射性セシウムに関する検査が定期的に行われております。検査は福島県による公的検査と、漁協による自主検査の2種類があります。
国が定める基準値(100ベクレル/kg)を越えた場合は、国から出荷制限が指示され、基準値を安定して下回るまで出荷は再開されません。原発事故直後(平成23年度)からモニタリングが継続されており、最も多い時で年間9,000件近くもの検査が実施されてきました。 平成23年4月には、福島第一原発の岸壁から高濃度の汚染水が海に流れ出たことで、全体の3分の1程度が基準値を超過しておりましたが、代謝によって魚の体内から放射性セシウムが排出され、基準値超過件数が徐々に減少しています。原発事故直後の出荷制限魚種は40種以上ありましたが、時間の経過と共に安全性が確認され、令和6年10月に「クロソイ」の出荷制限が解除されたことで、現在福島県沖における全ての魚種が出荷制限を解除されています。
漁協の自主検査は福島県よりさらに厳格で、国の基準値の半分である50ベクレル/kgを自主基準値に設定し、水揚げ日毎に出荷予定の全魚種を対象に検査を実施しています。これまでに国の基準値を超過したケースは4例ありますが、いずれも市場には流通していません。 水揚量の回復に伴い、漁協による自主検査数も増加し、令和5年以降は年間2万件を超える検体が検査されています。全体を通じて、国の基準(100ベクレル/kg)や自主基準(50ベクレル/kg)を超える検体は極めて稀であり、客観的に見てほとんどの検体が基準値以下となっている状況です。
国は福島第一原発事故以降、食品からの年間被ばく量の目標値を1ミリシーベルト以下にする目標を設定しました。 これは国際放射線防護委員会が自然からの被ばく量について世界各国の地域差を踏まえて誰でも受け入れ可能な目安を1ミリシーベルトとしていることを受けたもので、1ミリシーベルトを超えたから危険というわけではありません。一例ですが、病院の(胸部)CTスキャン検査で約3~7ミリシーベルト被ばくすると言われております。がんの相対リスクと比較して考えると、喫煙者は非喫煙者と比べて発がんリスクが1.6倍となりますが、この差は1,000~2,000ミリシーベルト被ばくした場合と同等、野菜不足の場合は発がんリスクが1.06倍となり100-200ミリシーベルト被ばくした場合と同等といわれています。このことから、1ミリシーベルトがかなり小さい値であることがご理解いただけると考えております。 ちなみに、日本の自然からの年間被ばく量は約2.1ミリシーベルトとなっており、ヨーロッパ各国と比べてもかなり低い値となっています。ヨーロッパは伝統的な石造りの建物が多いため、石材に含まれる放射性物質(ラドン)による影響が大きいとされています。
国が定めた食品からの年間被ばく量1ミリシーベルトという目標が達成されているかについて、国、福島県、コープふくしまが調査結果を公表しております。これらの調査結果により、食品による被ばく量を1ミリシーベルト以下に抑えるという目標は十分に達成されていることが証明されています。
実際に流通されている福島県産および近隣県産の食材をサンプルとして測定した結果、年間被ばく量は最大でも0.0016ミリシーベルトと、目標値より低い結果となっております。
福島県内の一般家庭が実際に購入・飲食されている食材と同じものをサンプルとして測定した結果、年間0.0026ミリシーベルトという極めて低い数値が示されています。
陰膳調査(一般家庭から特定の個人の食事を実際に集めて混合・均一化して試料とする)を実施しており、実際の家庭料理1人分を丸ごと測定する調査結果では、すべて検出限界値未満(1ベクレル/kg)未満となりました。仮にこれらの食材を毎日2kg食べ続けたと仮定しても、被ばく量は年間0.0095ミリシーベルトに留まるとの報告がなされております。
水産庁では、ALPS処理水の放出に伴い、新たな懸念として注目されるトリチウムについて、モニタリングを実施しています。
水素の放射性同位体であるトリチウムは、他の放射性物質に比べて人体への影響が非常に小さいため、国内における食品中の基準値は設定されておりません。WHOの飲料水基準では1Lあたり1万ベクレルとされていますが、この濃度の水を毎日2L飲んでも年間被ばく量は0.1ミリシーベルト程度とされています。トリチウムは体内に濃縮されず排出される性質を持ちますが、水産庁ではALPS処理水放出に伴う風評抑制と信頼性確保のため、独自にモニタリングを実施しています。 モニタリングには、検出限界値を0.4ベクレル/kgに設定して1ヶ月以上かけて分析する「精密分析」と、検出限界値を10ベクレル/kg程度に設定して翌日〜翌々日に結果を出す「迅速分析」の2種類があります。「迅速分析」の分析頻度は放出期間中に週4回、放出期間外は週1回、原発近傍で採取されたヒラメなどを用いて行われており、これまでに550検体(公演当日時点)を分析して、結果は全て検出限界値未満でした。 「精密分析」は、令和4年から開始し、令和8年までに東日本の広範囲から採取した844検体(公演当日時点)を分析しており、そのほとんどが検出限界値未満となっています。
なお、これら放射性物質の検査結果は水産庁ホームページでも随時公表しておりますので、是非ご覧ください。
水産物の放射性物質調査の結果について(水産庁)