令和8年3月5日、「東北復興水産加工品展示商談会2025」において、「繁盛店バイヤーが欲しいと思う商品の条件とは」と題したセミナーが開催されました。飲食業態を展開する一家ホールディングスが、どのような視点で消費者ニーズや市場トレンドを捉え商品開発・業態開発を行っているか、具体例を交えながらお話いただきました。
当社は千葉県を拠点として、主に飲食事業を展開している会社です。1997年に1号店となる「くいどころバー一家」を千葉県市川市にオープンし、それ以降は地域に根ざした店舗展開を続け、現在では約100店舗まで拡大しております。 現社長である武長は創業当時20歳という若さでしたが、1年に1店舗と着実に拡大を続け、2017年に東証マザーズ(当時)、2019年に東証一部へ上場を果たしました。現在の売上高は110億円規模にまで成長しています。 主力の飲食事業では、“第二の我が家”をコンセプトとしたくつろげる居酒屋「こだわりもん一家」、博多の屋台村を再現した活気・笑顔が溢れる居酒屋「屋台屋博多劇場」、現在ブームが到来しているジンギスカンを主力とした本格大衆居酒屋「大衆ジンギスカン酒場ラムちゃん」、寿司・おでんを主軸とした本格和食酒場「にのや」の他、2015年には米国ハワイ州にラーメン居酒屋バー(GOLDEN PORK)をオープンし、海外進出も果たしております。 飲食事業に限らず、2012年からはブライダル事業に参入し、東京都港区に東京タワーが一望できる婚礼施設「The Place of Tokyo」をオープンしました。これ以外にもレジャー事業として、“日本初の泊まれる植物園”をコンセプトとしたグランピング施設を展開しています。 “おもてなし”を軸として、日々サービスにあたっております。
当社では三分化戦略と称し、初回客には「グランドメニュー」を、2〜3回目客には「旬彩メニュー(季節のおすすめ)」を、常連客には「本日のおすすめ(日替わりで料理長が考案したメニュー)」をといったように、来店回数に応じておすすめメニューを変えており、新規客を取り込むことよりもリピーターを優先させて、飽きさせない工夫を行っております。 なかでも「旬彩メニュー」は創業時からのならわしとなっており、「旬を彩る」の字のとおり、春夏秋冬それぞれに前期・後期で分け、年8回、45日サイクルで新しい料理を開発しています。食には「はしり」「旬」「なごり」があり、特に季節の変わり目の「はしり」を提供することで、季節の移ろいをお客様に感じていただくこと心掛けております。
新しいメニューを考案する際は、家では食べられない“プロ”の味の提供することと、季節感を感じてもらうことの2つのポイントを心がけており、既存商品においても、①お客様満足度、②原価率、③生産性(工数)の3つ視点で定期的に改良を行っております。居酒屋業態は特にアルバイトスタッフが多いため、味のブレを減らすために、①見た目、②量、③温度、④提供時間、⑤価格を一定化させております。さらに「五感五覚」や「五触」も考慮し、味だけでなく、見た目・音・香り・皮膚感なども重視するようにしています。この当たり前の基準を徹底することこそ、ブランドの基盤を盤石にするための一歩と考えております。 つぎに商品開発のポイントは、属人性に捉われず、組織として「売れる商品」を量産するために、誰に・何を・いくらで・どうやって売るのかを明確にした「コンセプトシート」を独自で作成し、大きく分けて8つの視点で商品開発や店舗展開を判断しております。 さらに顧客をセグメント化(グループ分け)させて、それぞれのニーズに合わせた商品開発を行っております。一例ですが、男性グループは上司・同僚との宴会が多いと想定して味が濃くてパンチの強いスタミナ系のメニューを、女性グループは女子会などを想定してシェアできるようなメニューをといったように、それぞれの属性で好まれるメニューが変わります。 また業態毎に料理人の熟練度が異なるため、料理人が少ない(熟練度が低い)業態では安定したメニューを提供するために完成品やPB商品等を主に、料理人が多い(熟練度が高い)業態では加工度の低い食材を主にといったように、業態によって仕入れる商品の特性も異なります。 全業態を通して、メニューにひと工夫することを大切にしており、知っている味に当社ならではのオリジナリティをプラスすることで、看板メニューが出来上がっていくものと考えています。 これから時代の変化や生活様式の特徴などを意識した業態開発・商品開発がより重要になってくるものと考えております。時代の変化として「個食化・少人数化」、瞬時にお店の特徴が分かる「専門性・専門店」、単に飲食するだけなく雰囲気等も含めて楽しむことができる「コト消費」、少子高齢化を背景とした「健康志向」、一部消費者の嗜好に刺さる「ニッチ」、人材不足やDX化を踏まえた「省人化、セルフ化」など、様々なキーワードも意識していかねばなりません。
私達飲食店の存在意義とは、お客さまの最終消費に立ち会える立場であることから、メニューを通じてお客様に作り手の想いを伝えていくことだと考えております。当社では、「何をするか(何を買うか)」より「誰とするか(誰から買うか)」という考え方を重視しており、商品開発や商品の仕入れにおいては、産地・生産者を実際に訪れて作り手の想いを肌で感じる取り組みなども行っております。これからも生産者・食材との出会いを大切にして、いつの時代も変わらず食べ続けていただけるような商品開発・業態開発を続けていきたいと考えております。