企業レポート 被災地で頑張る加工屋さんをご紹介します
第127回宮城県山徳平塚水産株式会社
もともと取り扱いが少なかったレトルト商品をメイン商材として販売しなくてはならない悪戦苦闘の日々。マンションの一室で商品をストックしながら再起を図っていた2年間。必死に販路を模索しながら、商品の品質についても改良を重ねます。
「OEMで他社に製造してもらっているので、コストもかかります。大手メーカーとは価格では競争できないので、販売価格にのせても、これなら買おうという付加価値をつけなければいけない。そこで、おでんの大根にいたるまですべて国産。練り製品は、化学調味料や保存料、リン酸塩にいたるまで不使用。魚惣菜は加圧してじっくり煮込むことで、骨までやわらかくし、丸ごと食べられるようにし、健康によくておいしいという点で差別化をはかりました」
こうした品質改良の甲斐もあり、販売先も徐々に増加。味へのこだわりが増すとともに自社で納得のいく製品を製造したいという思いも強くなっていきました。そして、2013(平成25年)7月、震災当時、4カ所あった工場を整理・集約するかたちで、本社工場を再建しました。
自社工場再建後は、さらに理想に近づくようレトルト惣菜の味を追求していきます。
「一口食べてうまみが強すぎる味だと全部食べると飽きてしまうんですよね。試作品づくりのとき、私たちは一口だけ試食して判断しがちですが、それでは食卓で食べるお客様のニーズは掴めない。全部食べきっても、もうちょっと食べたいなと思える。そんな味を目指しています」
その味にたどり着くためには原料選びが最も重要だそうで、
「加工品は原料以上の味にはなりません。100点の原料を使って120点にはできないけれど、80点、90点にはなる。最大限素材の味を生かした味を目指しています。原料が50点なら、いくら味付けを工夫しても50点以上にはなりませんから」と平塚さん。
原料の仕入れは、地元石巻港はじめ三陸沿岸で水揚げされるものを中心に行います。地元の業者と密に連絡をとり、原料として使用するかは、一度試作として商品まで仕上げてから「商品として使えるか」の判断を怠らないそうです。