企業レポート 被災地で頑張る加工屋さんをご紹介します
第127回宮城県山徳平塚水産株式会社
平塚さんは、石巻ならではの「食・食文化・地域資源」を生かした地場産業の復興・発展をめざして、企業、観光事業者、大学などが連携して立ち上げた「石巻フードツーリズム研究会」にも携わっています。同研究会では、石巻が発祥の地とされる「ぼたん焼ちくわ」など現代まで継承されてきた練り物文化を活かしながら新しい当地の味を創造する「石巻おでんプロジェクト」の部会長も務めます。
「石巻はかつて高品質の焼ちくわ、かまぼこなどを生産するメーカーが多数存在していましたが、震災後に生産をやめるメーカーも多くありました。せっかくこの地で育まれて受け継がれてきた練り物文化ですから、地域の味覚として継承しながら、この石巻おでんを地元の方に愛される食にしたいという思いで活動しています」
さらに、「一社だけ突出していても、本当の意味での石巻の繁栄にはつながらない」という考えのもと、石巻で同業者、また業種を超えたつながりを大切にしながら積極的に活動する平塚さん。そのひとつが、「石巻うまいもの株式会社」(https://umaimono-ishinomaki.com/)です。震災をきっかけに石巻で水産、農産、畜産など食に携わる10社が、各社の知恵やノウハウを持ち寄り、切磋琢磨しながら新しいものを生み出すことを目的に共同出資して立ち上げました。
「会社の枠を超え、10社を一つの工場と見立てて商品を作っています。例えばうちは常温レトルト技術を持っているので、そこはうちが請け負おうと。自社だけで設備を整えようとすると、負担が大きいけれど、協力すればそれぞれの設備が使えるから便利なんですよ」
各社の特色や技術が詰まった「石巻金華茶漬けシリーズ」は、銀鮭、サバ、カキ、ホヤなどバリエーション豊かで、累計販売数が50万食を超えるヒット商品となっています。
地域の特色を生かした商品づくりを続ける平塚さんですが、いつもどのようなことを考え、開発されているのか聞いてみました。
「営業や商品パッケージももちろん大切。でも、本当の理想を言えば、小手先ではなくて、もう一度食べたくなる味、だまっていても営業しなくても売れていくような(笑)、本質的なおいしさを追求した商品を作っていきたいです。これは理想ですが、ものづくりに携わる人間としては、そうありたいなと思っています」
移転したばかりのタイミングで本社を津波で流され、マンションの一室で事業を継続していた震災直後から、地域の振興も担う存在に。その復興の歩みを支えてきたものはなんだったのか。やはり、学生時代に芽生えたものづくりへの純粋な思いのように感じました。
山徳平塚水産株式会社〒986-0022 宮城県石巻市魚町2-8-9
自社製品:煮魚、焼魚などの魚惣菜、調理済みおでん
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