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展示会レポート東北復興水産加工品展示商談会2019 セミナーレポート

東北復興水産加工品展示商談会2019 プレゼンレポート

セミナーレポート① 「水産政策の改革」に関する説明について

昨年の12月に70年ぶりの大改革として制定された改正漁業法。今回は、その水産政策改革の背景と趣旨、そして改正法の制度運用に向けた現在の進捗状況について概要をお知らせいたします。

講師
水産庁漁政部企画課
水産業体質強化推進室長
鹿田 敏嗣
水産庁漁政部企画課 水産業体質強化推進室長 鹿田 敏嗣 氏

水産政策の改革の背景

水産資源量の減少および若者の漁業離れ

下図の「漁業生産量の推移」を見て分かるように、国内の漁業生産量は1984年をピークとして、現在はその約3分の1にまで減少しています。この大きな要因としては、長い周期で変動するマイワシの減少、200海里体制で海外の漁場からの撤退、遠洋漁業の縮小が考えられます。この要因を差し引いたグラフが、表中の「赤線」部分ですが、右肩下がりであることから、資源自体も減少していると推測されます。

また、日本全体の人口が減少しており、加速度的に超高齢化社会に向かっている中、漁業就業者の現状は、この15年で24万人→16万人と大幅に減少しています。平均年齢も高く、将来の担い手が確保できるのか懸念のあるところです。

このような厳しい情勢のある一方で、「浜の活力再生プラン」をキッカケに漁業者が主体的に地域の漁業の課題解決に取り組む動きが進んでいること、ICTなどの先端技術の活用分野が広がって水産分野での活用も進んでいることなど、前向きな変化もあります。

水産政策の改革の概要

このような現状を踏まえ、今回の改正漁業法は、ベースとして資源管理をきちんと行った上で、生産分野である遠洋・沖合漁業、養殖・沿岸漁業の地域それぞれのビジョンに基づいた展開等を促進し、その先にある水産物の流通、加工分野とともに活性化させ、水産業全体を発展させるというコンセプトで作られています。改正された漁業法は、2020年末までには、実際に運用が始まります。具体的な運用については、現在、都道府県や業界団体から意見を聴取しながら、政省令や技術的助言など運用のルールの検討・策定作業を進めています。

・水産政策の改革の内容(漁業法改正関係)

水産政策の改革の内容については、次の項目毎で整理されております。

詳しい内容はこちらをご確認ください。
(水産庁HP水産政策の改革について関連資料「水産政策の改革について(漁業法等改正法関係)」

・水産政策のポイント

今回の水産政策の改革は次の8つです。

詳しい内容はこちらをご確認ください。
(水産庁HP水産政策の改革について関連資料「「水産政策の改革」パンフレット」

なお、水産政策の改革のポイント説明動画をはじめ、「漁業法等の一部を改正する等の法律」関連資料について水産庁ホームページに公表されておりますので、是非ご覧ください。
http://www.jfa.maff.go.jp/j/kikaku/kaikaku/suisankaikaku.html

セミナーレポート② 「新たな外国人材受け入れ制度に関する説明」

この4月から制度が開始された「特定技能」という新しい外国人受け入れ制度について、セミナーが開催されました。その概要をお知らせいたします。

講師
水産庁漁政部加工流通課課長補佐
(加工振興班担当)
青木 保男
水産庁漁政部加工流通課課長補佐(加工振興班担当)青木 保男 氏

現在、水産加工分野においては、既に「技能実習制度」として海外からかなりの人数の実習生が来日しています。その中で2019年4月から新たに始まった「特定技能」という新しい外国人受け入れ制度。この「技能実習制度」と「特定技能」について、ふたつを比較しながら説明いたします。

「技能実習制度」と「特定技能」について

外国人技能実習制度で技能実習生を受け入れる場合、ほとんどの水産加工の現場では、監理団体型を選択することになります。監理団体が原則2か月間、座学を行った上で、水産加工事業者で実際に技術を学びます。この実技実習の間は、雇用関係が結ばれます。

1年経過すると、基礎級の試験があり、合格すると次の2年目、3年目は技能実習2号となり、2年間の実習を行います。さらに、3年経過した段階で3級の実技試験に合格すると、更に4年目、5年目と技能実習生3号として実習ができ、トータル5年間の実習が可能となります。ただし、3年目の3級試験に合格した時点で、一旦、1か月以上の帰国が義務付けられています。

外国人技能実習制度においては、水産加工関係においては、加熱性水産加工食品、非加熱性水産加工食品、水産ねり製品、缶詰巻締の4つの職種に分けられ、技能実習生の受け入れを行っていました。しかし、特定技能では、農業、漁業、介護など14の分野に分かれており、水産加工関係は飲食料製造業の分野での受け入れとなります。

技能水準について、「特定技能」では、既にある程度の専門性、技能を有していることが必要であり、飲食料品製造業の分野では、HACCPに沿った衛生管理に対応できる程度の業務に従事できるレベルというのが一つの基準となっています。また、日本語能力の水準は、ある程度日常会話ができ、生活に支障のない程度の能力を有することが基本とされています。これらについては各事業所管省庁が定める試験等により能力の確認を行い、合格するという事が条件となっていますが、3年の実習を終え、技能実習2号を修了した外国人は試験等免除となります。

「特定技能」において、外国人材の受け入れ主体は、原則直接雇用と限定されていますが、農業と漁業については、1年間の中で繁忙期と閑散期が発生するため、派遣業を通じての雇用を可能としました。そうすることで夏は北の地域で、冬は南の地域でというように年間を通じて就業してもらうことを可能になります。詳しい話につきましては、農業分野の窓口、漁業分野の窓口に直接お問い合わせて頂くのがよろしいと思います。また、外国人技能実習制度について、平成29年11月から改正がなされ、実習期間の上限をそれまでの3年間から5年間へ変更しました。このほか、きちんと外国人材を受け入れている優良企業や監理団体には優遇措置として、受入人数の基本枠が拡大されました。

水産分野における外国人技能実習生の状況

平成28年度のデータによると、水産加工業では約1.8万人の外国人技能実習生が実習を行っています。工業統計から水産加工業の全体の従業者数は、約15万人と推計されていますので、外国人技能実習生は、その約1割を占めているということになります。またその数は近年増加傾向にあり、国籍については、中国が42%、次いでベトナムが40%となっています。

「特定技能」における試験について

「特定技能」における技能水準(試験区分)については、農林水産省において試験を実施することとなっており、現在、農林水産省の食品製造課において検討委員会を設けて試験問題の作成を行っているところです。日本語能力水準試験は、2つある試験「日本語能力試験」、「国際交流基金日本語基礎テスト」のうちどちらかを受けて頂くことなります。「日本語能力試験」は従来からあるものですが、「国際交流基金日本語基礎テスト」は、国際交流基金が新たに設定したテストとなっております。

外国人受入れ環境整備事業について

これは日本に来ている外国人の方々を円滑に受け入れて地域でうまく受け入れてもらえるような取り組みに対して国が助成するものです。この補助を行うことによって、うまく受け入れが出来ているところに関しては、それを優良事例として他の地域へも横展開を図っていければ良いとの考えです。
現在、この事業の受託者は一般社団法人大日本水産会、加工分野に関しては全国水産加工業協同組合連合会と協力しながら、今年度補助対象とする取組について調査等を実施しているところです。

セミナーレポート③ 「水産物の放射能調査について理解を深めるために」

令和元年6月25日、東北復興水産加工品展示商談会2019のプレゼンステージにおいて「水産物の放射能調査について理解を深めるために」と題したセミナーが開催されました。本セミナーは、「震災後8年間の調査結果と基準値や放射線リスク等の説明を通じて、水産物の安全性について理解を深めること」を目的に開催されました。

講師
水産庁増殖推進部 研究指導課
水産研究調査班
佐藤 翔太
水産庁増殖推進部 研究指導課 水産研究調査班 佐藤 翔太 氏
講師
国立研究開発法人水産研究・教育機構
中央水産研究所海洋・生態系研究センター
放射能調査グループ
三木 志津帆
国立研究開発法人水産研究・教育機構 中央水産研究所海洋・生態系研究センター 放射能調査グループ  三木 志津帆 氏

セミナー内容について

セミナーレポート④ 「ユニバーサルフード対応で世界をおもてなし」

国内外において活躍されている先駆者たちを迎え、東北被災地域の水産加工品を活かして世界中から訪れる観光客をおもてなし、そして、世界中に届けるための今すぐ出来るフードダイバシティの取り組みを学ぶセミナーが開催されました。

司会
アリティーヴィー株式会社 代表取締役
佐藤 貴之
アリティーヴィー株式会社 代表取締役 佐藤 貴之 氏

アリティーヴィー株式会社 代表取締役である佐藤氏は、仙台市出身であり、もともと番組ディレクターとして東北六県の旅番組を制作していらっしゃいました。
2010年にはインターネットテレビ局を設立され、そのインターネットテレビ局では、東日本大震災以降、被災しながらも立ち上がり前に進む東北の人々に焦点を当て、世界に向けたポジティブ情報を発信しています。
また、東北被災地の復興を加速させるため、東北へ人を呼び込む活動として、観光誘致の映像制作にも力を入れ、英語、中国語、韓国語、アラビア語、インド語などを活用し、15の国と地域へ東北の魅力を伝えています。
そうした活動の中で「東北日本にはハラール製品をもう少し増やせないか」、「東北日本にあるハラール製品について分かりやすく紹介してほしい」などの要望も受けることが多く、訪日外国人に対しての対応の遅れを感じることも多いそうです。
そこで今回は、国内外で活躍されている3名の先駆者から「ユニバーサルフード対応で世界をおもてなし」と題し、それぞれの活動の様子をお話ししていただきます。

1.ユニバーサルフードの対応・安心かつ安全な世界基準な食を目指して

プレゼンテーター
一般社団法人メイドインジャパン・ハラール支援協議会
理事長
高橋 敏也
一般社団法人メイドインジャパン・ハラール支援協議会 理事長  高橋 敏也 氏

外国人観光客の誘致は、少子高齢化、人口減少が進む日本が経済成長を続けるために不可欠の成長戦略です。しかし、観光として成り立たせるためには、ただ来日してもらうだけでなく、食事、お土産、宿泊等の経済活動をしてもらう必要があります。そのためにも、ユニバーサルフードへの対応が早急に求められます。
下表は、食に関して何らかの制限をもつ人を表したものです。世界で「食のルール」を持つ人は76億人中約34億人もいることがわかります。

イスラム教徒 約17億人 ハラール対応が求められる
ヒンズー教徒 約8億人 約60%強がプラントベースを選択する人々
その他宗教 約2億人  
プラントベース 約3億人 プラントベース・ライフスタイルと自己選択
アレルギー 約4億人  

※プラントベースとは、植物由来の食品を中心とした食事

スポーツ界もイスラム教徒が多く、2018年のサッカーワールドカップで優勝したフランス代表のうち7人がムスリムでした。また、オリンピックアスリートのムスリム比率も年々増加しています。

オリンピックアスリートのムスリム比率

オリンピック大会 全アスリート ムスリム ムスリムの割合
2012 ロンドン 約10,500名 4,000名 38%
2016 リオ 約11,000名 6,000名 54.5%
2020 東京 約12,000名 8,000名 66.6%

ハラール認証取得の際には、衛生基準をクリアした上で、宗教的理解も求められます。
イスラム教徒においても宗派により食べない魚があり、スンニ派はサメ・鯨を食べることを、またシーア派はユダヤ教と同じく「ウロコ」のついていない魚を食することを禁止しています。
サウジアラビアでは、エビはハラールであると考えられたため、輸出が可能になりました。国により見解は異なるため注意が必要です。

現在も東北では多くのインドネシアの方が働いていますが、これからもっと様々な国の人たちが入ってくることが考えられます。ハラールのほかにヴィーガンなど様々な考え方を持つ人々がいます。そんな彼らが本当に安心して食べることができるようユニバーサルフードへの対応をしていく必要があると思いますとのことでした。

2.GEISHA缶詰のグローバル展開(インバウンド市場、ハラールフードの取り組みについて)

プレゼンテーター
川商フーズ株式会社
食品開発部長
金元 一郎
川商フーズ株式会社 食品開発部長 金元 一郎 氏

「GEISHA」というブランドは、アメリカ市場において日本をイメージしやすいネーミングということで1912年に同社が商標登録し、今年で108年を迎えるブランドです。
当初は、日本から「タラバガニ」、「ツナ」、「みかん」などを輸出していましたが、ツナ缶の需要増によりタイでの生産増加および円高により輸出競争力が低下したため、1970年頃を境に缶詰の供給体制は、中国やタイなど海外にシフトしています。

現在、「GEISHA」は、世界のトップブランドのひとつとして、水産・果実・野菜などの143品目を欧米、中東、アフリカなど25か国で販売。海外展開をするにあたっては、現地販売先の仕組みづくりを重点に行い、事業を成功させるためには、現地エージェントや卸業者の選定がポイントとのこと。
また、サウジアラビアでは、「GEISHA」ブランドの通常品に加え、富裕層向けにメイドインジャパンの「プレミアムマグロ缶詰」の販売も行っています。

プレミアムマグロ缶詰

すでに浸透している海外でのブランドイメージを日本国内でも活用し、インバウンド市場で訪日外国人向けに販売できないかと考え、サウジアラビアを中心に70年間にわたり輸出実績のある「プレミアムマグロ缶詰」を使ったギフトセットの開発を行いました。

ムスリムの目に留まるよう国産であることをアラビア語および英語で表記にし、販売先である観光施設、お土産品店、ホテル、飲食店には英語、インドネシア語、日本語のPOPを配布。飲食店では同商品を使用したコラボメニューを作ってもらい、レジ横の物販コーナーで缶詰を販売予定とのこと。

POPの例

2017年度訪日外国人28.9百万人のうちムスリムは1.8百万人(推計)とされる中、ムスリム向けの十分な食の選択肢が提供されていません。そのため、観光地、宿泊地で食べられるものが少なく、冷凍スナック、調理品等へのニーズが高いことが判明。そこで、同社は、サウジアラビア、マレーシア市場での知見、ネットワーク等を活かし、現地ですでに販売されている缶詰を原料とした「冷凍サモサ(三角春巻)」を開発し、2019年2月にインバウンドトレードフェアに出展したところ、簡便性やメニューの拡張性、日本人向けでも可能性があることから、外食、ホテル、大学生協、観光施設等より引き合いが来ているそうです。

サモサ

ハラール対応を進めていく過程で、ベジタリアン、ヴィーガン向けの食品への問い合わせも増加。
ユニバーサルフードの重要性を再認識し、現在新商品の開発を実施中とのことでした。

3.外国人観光客へのフードピクトの活用

プレゼンテーターネクストダイバシティ株式会社
代表取締役社長
奥 健尚
ネクストダイバシティ株式会社 代表取締役社長  奥 健尚 氏

日本の政策目標として、2020年には外国人観光客について4,000万人、外国人留学生は30万人という数字が掲げられています。こういった訪日外国人が増加する中で、特に食品について下記のような課題への対応が急がれています。

■ 日本側の対応課題

これらの対応策として、フードピクトの活用が挙げられます。
これは、アレルギー特定原材料7品目の絵文字、宗教上による食の禁忌とベジタリアンに関する7品目で構成されており、世界1,500名への「理解度、視認性、必要品目」調査および、国際標準化機構と日本工業規格の図記号制作ガイドラインを準用し、CUD(カラーユニバーサルデザイン)にも対応した絵文字です。
2017年4月からは、全国47都道府県の自治体への提供が始まり避難所におけるコミュニケーションのサポートを開始しています。

フードピクトを表示する企業側のメリットとしては主に3つあります。

今まで食に規制のある外国人の方々は、日本で販売される食品について、気になる商品があっても、原材料表示がほとんど日本語表示で中身が分からないため、購入しませんでした。しかし、フードピクトの導入が広がればこのような機会損失が一気に解決すると考えられますとのことでした。

セミナーレポート⑤ 「販路回復に取り組む水産加工業を後方支援」

販路開拓に取り組みたいが、人手不足などの課題もあってそこまで手を回す時間的人的余裕もない、そんな東北の水産加工業者の声を聞きます。こうした人手不足に悩む水産加工業者に向けて4人の専門家にから、AI、ICTなど新技術で後方支援をするという視点でプレゼンが行われました。

プレゼンテーター

  • 1 株式会社ニッコー 代表取締役
    佐藤 一雄 氏
  • 2 東杜シーテック株式会社 Fish & Robo Base
    鈴木 智浩 氏
  • 3 株式会社神戸製鋼所 機械事業部門 産業機械事業部 重機械部 営業室 係長
    大館 敦 氏
  • 4 岩手大学理工学部 准教授ソフトパス理工学総合研究センター 農林水産ロボティクス研究グループ長
    三好 扶 氏

「オンリーワンテクノロジーで次代を拓く」株式会社ニッコー 代表取締役 佐藤 一雄 氏

一次産業において人手不足は特に深刻な問題データ、弊社地元の北海道も例外ではなく、外国人人材の活用や自動機の導入といった人手不足をバックアップするための取組が、各地で行われています。
その取組の一つとしてオホーツク地区におけるホタテの殻剥き作業の自動化を自動化した「オートシェラー」を開発。これは、ホタテ原貝を投入するだけで、自動的に、殻・ミミ・ウロ・貝柱を分離させて、貝柱だけを生のまま回収する世界初のほたて自動生剥き機です。

佐藤 一雄 氏

大幅な省人化が見込める機器ですが、貝柱の品質について、手剥きのものと比較してどうであるのか、網走海産試験場とオホーツク漁業組合へ品質の評価を依頼し、色・栄養成分吸水率、水分量、ドリップ量などを計算した結果、オートシェラーで分離した貝柱は手剥きとほとんど差がなく、食味評価でも、見た目、食感、味ともに、違いは判らないとの評価となりました。

本機器の導入実証を行ったところ、作業員の労働負荷の軽減はもちろん、省人効果は82%を達成、生産性については5倍アップ、そして、製造されたホタテの歩留まりは手剥きと比較して0.5%程度アップしています。これを実際の数字で換算すると、ホタテ原貝重量を5,000トンとした場合、製品で25トンの増産となり、本年の製品価格がキロ当たり2,400円とすると6,000万円の増収となるそうです。

また、ロボットによるホタテ原貝の処理工程で一部、100℃で蒸気を原貝に吹き付けることから、加熱面の状態を懸念する声もありますが、剥いた後の貝柱の表面温度は、おおよそ38度~40度程度と人肌程度の温度にしかなりません。さらに、加熱面への吸水率への影響もなく、法定機関の検査により手剥き処理したもの同等との評価とのこと。

オートシェラー

このホタテ貝柱自動生剥きロボット「オートシェラー」を中核とする水産加工システムは、ご協力いただいた皆さんのおかげもあり、第8回ロボット大賞(中小企業庁長官賞)を受賞しています。

この製品について詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。

「人手不足時代における水産加工業へのAIの活用」東杜シーテック株式会社Fish & Robo Base  鈴木 智浩 氏

ご紹介していただいたのは、Smart Echo(スマートエコー)という、超音波エコー画像を用いた魚の雌雄判別装置で、魚の腹部超音波画像から、白子・魚卵の特徴を利用して、AIがオスとメスに自動で判別を行います。
東日本大震災が発生した際、大きな被害を受けた気仙沼の漁港で漁業の担い手、後継者不足に頭を悩ませているという話を伺い、地元企業として宮城県の課題を一緒に解決したいという思いから開発を決意したそうです。開発の際、東北大学の研究センターとのヒアリングに同行し、実際に判別するアルゴリズムなどを東北大学の先生からご協力頂きながら製品化したとのこと。

鈴木 智浩 氏
鈴木 智浩 氏

ラインナップは、大きく分けて3つ
■SXスマートホンタイプスマホ/タブレット画面で、魚の腹部超音波画像を観察できます。例えば、仲買人さんが買付の際、どれくらいの白子が入っているか、魚卵が入っているのかなどの判断材料として使用でき、また、養殖施設で、生け簀の中で魚がどれくらい成長しているのかを見るなどの用途に使えます。今後は、養殖向けのナマコ・ギンザケでの活用を目指し、機能を拡張予定。

SXスマートフォンタイプ
SXスマートフォンタイプ

■BXシリーズビルトインタイプハンディタイプで、片手で簡単に判別できます。判判別結果は、本体インジケーターとワイヤレスイヤフォンまたはスピーカーの音声で知らせます。完全防水で水洗いでき、電池で稼働し、コードレスとして使用できます。
船上で漁師さんが獲ったものをすぐ判断したい場合に使用することを想定しており、判断する魚種の追加は可能で、タラ、鮭以外の他魚種にも対応を検討中。

タラの腹部の超音波画像
タラの腹部の超音波画像

■半自動雌雄選別装置 コンベアに乗せるだけで、ラインにより雌雄を自動選別して魚を振り分けます。自動化することで人が魚に接触する回数が少なくなり、衛生面でも向上できます。今年は、サケで装置を実装して来年度以降タラの判別にも着手したいと考えているそうです。
漁港では、雄雌だけでなく様々な魚が水揚げされ、外観を見てどのような魚が入ったのかを自動で振り分ける設備が必要であり、その設備が無いと充分な省力化とならないとの要望があるので、まずは、雌雄選別装置を完成させたのち、外観による魚種判別をできるよう拡張し、省力化となるシステムを開発していきたいとのことでした。

この製品について詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。

「高圧処理による殻むき自動化」
株式会社神戸製鋼所 機械事業部門 産業機械事業部 重機械部 営業室 係長  大館 敦 氏

まずは、高い圧力を食品に加えた場合、どのようなことが起こるか。

  • 1非加熱の殺菌加工ができる 熱処理と違って均等にムラなく600MPaという圧力をかけることができるので、物理的に到底生物が存在しえない環境となる。熱をかけたくない食品群に対して適用が広がっている。
  • 2タンパクの変性などを引き起こす 肉や卵、魚のすり身なども生のまま風味を保ってゲル化される。また、米などは圧力により強制的に吸水され、もちもち食感となる
  • 3食品本来の色、風味、栄養を損なわない アメリカのスターバックスでは、高圧処理を用いて栄養素をそのままいかした生ジュースが販売されている。
大館 敦 氏
大館 敦 氏

この高圧を利用し「牡蠣の自動殻むき機」が開発されました。貝殻に圧力を加えることで、貝柱が変性し、殻から外れるという仕組みになっています。変性が起こらない程度の圧力で分離させることが出来るため、風味、見た目、食感を保ったまま殻むきが可能だそうです。

こちらの機器は、石巻市の「桃浦かき生産合同会社」から「復興のシンボルとして牡蠣の産業を復活させたい」、「機械化がどうしても必要である」という相談があり、共同で開発。
桃浦かき生産合同会社では、震災後、高齢化・人手不足の傾向がさらに顕著になってきており、牡蠣の手剥き作業は、相当な技術を要するため、これを自動化できたことは、省人化にとても貢献していると評価を得ています。
また、刃物を使用しないので殻の破片などの混入を防止することができ、微生物の不活性化の効果は高くないながらも、ある程度の菌抑制ができるので、大腸菌群やノロウィルスに対しての効果も実証されつつあります。

牡蠣の自動殻むき機「FOOD FRESHER」
牡蠣の自動殻むき機「FOOD FRESHER」

この製品について詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。

「缶詰製造工程を事例としたAIベースドロボットシステム」
岩手大学 理工学部
准教授 ソフトパス理工学総合研究センター農林水産ロボティクス研究グループ長 三好 扶 氏

「さんまの蒲焼」の缶詰の製造工程を簡単に示すと次の通りです。
原料投入 → 開き → 洗浄 → 金属探知機 → 焙焼 → 放冷 → 肉詰め → ウエイトチェッカー → その他チェック工程

この中の「肉詰め」の工程にあたる、「定量充填」という作業は、さんまの尾のほうの身と胴の部分の身を組み合わせて缶に入れ、全体で80gになるようにするというものです。
全行程のうち、3分の1程度も時間がかかる作業で、労力も必要とします。これを何とかできないかというのが、今回の取組です。

三好 扶 氏
三好 扶 氏

「定量充填」作業における機械化のポイントは、大きく3つ。

  • 1 尾の部分と胴の部分の身を見分ける
  • 2 尾の部分と胴の部分の身を重量が80gになるよう組み合わせる
  • 3 焙焼されて柔らかくなった切身を崩さず缶に入れる

①については、画像処理を使って身の形状を見分け判別。

②については、形ではなく、重量が伴ってくるため、秤を使わずに、画像から得られるデータだけで処理するということが、大きな課題に。これについては、AIの技術を利用し、カメラから得られる画像から面積の情報と三次元形状計測をし、高さの情報とその値を利用して体積の情報を一つの物質の特徴量とし、これを組み合わせ、適切な量の組み合わせが出来るようになりました。

③については、ゾル・ゲル状のものを移送可能な「スイットル(古川機工株式会社)」というロボットを使用することで、やわらかい身も崩れずに缶に入れることが可能になりました。
これで工程の機械化はおおむね完了し、あとはスピードをどれだけ上げられるかというところまで来ており、従来の工程では、12人で1時間当たり1万缶ほど製造しているので、まずはこの数字を目指していくそうです。

「作業の自動化」のため「ロボットを買ってくれば良い」という事ではなく、ロボットに「どういうプログラムを与えて何をさせるか」を設計しないと導入に至りません。
機械化するのであれば、AIが必要なところ、ロボットが必要なところなど、工程により優位性を考えながら導入することが重要です。

この製品について詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。

セミナーレポート⑥ 「新たなアプローチによる販路開拓の取り組み」

(平成30年度「チーム化による水産加工業等再生モデル事業」報告会)

平成30年度「チーム化による水産加工業等再生モデル事業」を活用した取り組みのうち、先進的なアプローチで販路開拓を行った5つのプロジェクト事業者からその成果の報告がありました。さらに、今後の販路開拓のあり方、可能性についての活発な議論がなされました。

「チーム化による水産加工業等再生モデル事業」は、大きく2つの特徴を持った事業です。一つは、いくつかの事業者がチームを組むこと、もう一つは、水産加工業にフォーカスしていることです。このモデル事業を横展開するためには、先駆的に取り組んでいただいた経験をみんなで共有していくことが重要です。
「私どもも、本日いただいたお話を踏まえて、来年度の事業にしっかりと結びつけてまいります」との復興庁 山里直志参事官のご挨拶でセミナーがスタートしました。

復興庁 参事官 山里 直志 氏

プレゼンテーター

  • 楽天株式会社 地域活性課 プロジェクトリーダー 山田 穂高 氏
  • 有限会社上野台豊商店 代表取締役 上野臺 優 氏
  • ジージーピー株式会社 代表取締役  藤崎 泰造 氏
  • 一般社団法人アグロエンジニアリング協議会 事務局長 赤木 弘喜 氏
  • ほやほや学会 会長 田山 圭子 氏
セミナーの様子
セミナーの様子

「VR動画等を活用した水産加工品マーケティングの推進」
楽天株式会社 地域活性課 プロジェクトリーダー 山田 穂高 氏

この事業の中で、VR動画PR教育として、参加事業者が自分で動画を製作することを目的としたセミナーを行っており、今、石巻市役所で見られるVR動画は、この事業で作成したものだそうです。
また、VR動画で水産の現場を実際に感じてもらうため、名古屋で開催した催事「楽天うまいもの大会」では、お客様に水揚げされたばかりのほやをVR動画で見てもらい、その横で実物のほやを販売。売上げも芳しく、アンケート調査の結果では「VRに出てきた商品を買いたい」という方が70%、「石巻に行ってみたい」という方が87%となり、好評を得ています。

山田 穂高 氏

「たった一つのツールで、たくさんの情報を伝達できるVRだからこそ、見せ方や伝えたいことを徹底的に検討し、その上で発信していく。そんな時代が来ていると思います。」とのこと。

また、セミナーを通して印象的だったのは、参加者の方々から、「この事業に参加するまで、同じエリアの同業他社と話をしたことがなかった」という声を多く聞いたことだそうで、参加者同士が手を取り合い、チームでこのエリアの産品を売り出すべきなのではないかと考える機会になったようです。楽天はインターネット販売の会社ですが、同じような商品を扱う企業同士が手を取り合い、どのように商品を売るかを考えるという姿勢に変わってきているそうです。

他の企業が手を出していない市場がまだまだたくさんあると山田氏。今までの販路だけでなく、どこにブルーオーシャンがあるのかをリサーチし、いかに差別化して一点突破し、ナンバーワンになるかが大事で、その方法は、同業他社と手を組み、何をすればシェアを広げられるのかを考えてみることだそう。例えば、ふるさと納税の返礼品は、約4,000億円規模の市場ですが、水産加工品の登録は、実はまだまだ少ない状況にあります。すなわち、ブルーオーシャンがそこには広がっているかもしれない。インターネット販売やふるさと納税などは、一つのチャンスであるとのことでした。

「“青・医・地”連携による小名浜産青魚の地産地消プロジェクト「あおいち」」
有限会社上野台豊商店 代表取締役 上野臺 優 氏

「あおいち」プロジェクトは、「カラダも地域も健康に」をコンセプトに、水産業、医療福祉、地域づくりの担い手さんと連携して、商品づくりや地域づくりを行っています。
「あおいち」のネーミングは、青魚の「あお」、医療福祉の「い」、地域の「ち」から生まれました。

上野臺 優 氏

「あおいち」の大きな課題は、水揚げ量の減少と、いわき市民の健康状態が他よりも悪いことです。いわき市では、心筋梗塞や脳卒中などの患者が増加しており、その改善に向けて、EPAやDHAを多く含む青魚を市民にもっと食べてもらい、健康効果を測定するプロジェクトを進めています。

このプロジェクトには、「地域づくり」と「商品づくり」という2本の柱があります。
「地域づくり」は、高齢者や小学生に試食などを通して「青魚は体に良い」という食育・啓発活動を行っています。「商品づくり」は、水産加工業者が栄養士や地元の料理人とチームを組んで、おいしく、かつ健康に良いものを開発しました。さらに、モニターに週に4食・3カ月間青魚を食べてもらったところ、その前後で脂質代謝関連の数値に改善が見られた方が7割(30名中21名)を占めたそうです。

今回、チームで「さばの味噌煮」、「さばの水煮」、「さばのパテ」、「さばのトマトソース」、「さんまのハンバーグ」の5つを商品化しました。今後の課題は、既存店舗やインターネットでのテスト販売を増加させることと、加工費や原料高騰を見越したコストダウン、さらなる商品のブラッシュアップ。食育や環境教育などとセットにして、SNSなどで魅力を発信していきたいとのことでした。

「あおいち」プロジェクトで商品化した製品
「あおいち」プロジェクトで商品化した製品

「陸上における牡蠣の蓄養・温度管理によるおいしい牡蠣の通年出荷モデル事業」
ジージーピー株式会社 代表取締役 藤崎 泰造 氏

「Social Marketing Office」は、地域にある資源を使い、どうやってその地域に事業をつくるのかをテーマ活動しています。
震災のあった2011年4月、何かお手伝いできないかと大船渡へ出向き、多くの若い経営者から話を聞いていたときに飲食店組合長と出会い、まず大船渡屋台村を開始し、新たに有限責任事業組合をつくったそうです。
その中で、漁師や水産加工業者、飲食店の方々と知り合い、まちづくりについて話をしているときに、「この町を復活させるには一点突破しかない」と話をしたそうです。

藤崎 泰造 氏

「一点」とは特産の「牡蠣」です。「牡蠣」を中心に集まった人たちとチームを組み、まちを勝手に盛り上げる作戦を立てました。それが「陸上における牡蠣の蓄養・温度管理によるおいしい牡蠣の通年出荷モデル事業」です。
一年中出荷できるように、海で育てた牡蠣を貝毒プランクトンが発生しやすい冬の間だけ陸上で餌を食べさせるという取組です。グリコーゲン濃度を下げないように蓄養すれば、将来的に貝毒の発生を回避できる養殖体制が構築できるのではないかということで、復興庁の支援を受けながら、牡蠣の陸上蓄養技術の確立を目指しています。
しかし、これはいわば「防災」であって、牡蠣の付加価値が高まるものではありません。高級な加工品をつくるのにも限界があります。最も付加価値を高めてくれるものとして考えられるのは、牡蠣をテーマにした体験観光であり、そこに人が集まって地域にお金を落としてくれることではないかと考えているそうです。
今後は、現在行っている活動を、地域のしかるべき組織と連携して取り組む段階に入らなければいけません。それから、付加価値を生み出すことと販路の開拓、さらに「防災(安全)」に加えて牡蠣を育てる環境保全にも目を向けていくとのことでした。

「陸上における牡蠣の蓄養・温度管理によるおいしい牡蠣の通年出荷モデル事業」の概要
「陸上における牡蠣の蓄養・温度管理によるおいしい牡蠣の通年出荷モデル事業」の概要

「塩釜かまぼこ手焼き職人育成による販路拡大事業」
一般社団法人アグロエンジニアリング協議会 事務局長 赤木 弘喜 氏

かつて宮城県は、練り製品の出荷額で日本一を誇っていました。その大半を占めていたのが塩竈市です。
笹かまは、石巻市と仙台市、揚げかまは、塩竈市が主流でした。しかし、塩竈のかまぼこ(練り製品)の生産の推移を見ると、400億円(平成5年)から170億円(平成26年)に落ち込んでいます。

赤木 弘喜 氏

このような練り製品の消費減退を克服するために、仙台市内の居酒屋において、かまぼこを提供している店がなかった点と、熱々がおいしいといわれているかまぼこを冷たいまま食している点に着目して、しっかりと販路が拡大するビジネスモデルを構築しようと考えたそうです。

まず、教科書をつくり、「塩竈かまぼこ手焼き職人」を育成。飲食店にも参加してもらい、仙台で3回、東京で2回講習会を開き、塩竈の歴史から学んでもらい、その結果、参加者52人全員が手焼き職人試験に合格。合格者には認定証と店に置くパネル、のぼりを贈呈しました。また、仙台や東京、さらに「居酒屋JAPAN」という展示会にも参加して、たくさんの方々に「塩竈かまぼこ」をふるまい、400人にアンケートを実施したところ、「熱々がおいしい」との回答が92%にのぼり、地元でも熱々を食べてもらうことを啓蒙する必要性を感じたそうです。

1年間活動してきた中で印象的だったのは、子どもが「塩竈かまぼこ」を食べているのを見た多くのお母さんたちの、「“おいしい”といってくれる練りものは初めてです」という言葉で、子どものおやつに練りものを推奨することが急務であると感じたとのこと。練りものは高タンパク・低カロリー食品のため、高齢者やスポーツ選手にもマッチします。郷土の産業構造を守るためにも、健康食品としてみんなで推していくことをしっかり考えていきたいとのことでした。

塩釜かまぼこ手焼き職人育成による販路拡大事業 事業内容
塩釜かまぼこ手焼き職人育成による販路拡大事業 事業内容

「ほやのイメチェン!プロジェクト」ほやほや学会 会長 田山 圭子 氏

ほやほや学会は、「ほや」の認知度向上と販路拡大の活動を行っており、2018年度は加工会社だけではなく、ほや漁師、地元の高校や医薬品会社がひとつのチームとなり、「寄ってたかって、ほやのイメチェンをする」を実行。

まずは、「ほや」が苦手という方の理由の一つである「におい」について徹底的に調査。その結果、ほやのにおいのもとは、時間の経過によるふんの影響が大きく、それを変えるには、発送方法を見直したり、納入先とよりコミュニケーションを密にして、扱い方を伝えたりする必要があるということが分かりました。

田山 圭子 氏
田山 圭子 氏

栄養価の部分でも、「ほや」は、アルツハイマー対策の注目成分である「プラズマローゲン」という物質を人間の体内にある状態に一番近いカタチで多く含んでおり、さらには亜鉛の含有量も多いという優位性を伝えていくことが大事であるとのこと。
また、今年3月に開催された「フードフェス」では、においの少ない加工品を食べてもらう機会を設け、3,000人に試食行い、8割の方から「おいしい」と評価を受けたそうです。この催しにおいて、いまは小さく切ってお金を払って処分している「ほや」の殻の利用についてもPR。殻付きのまま身と一緒に出汁を取ると旨味たっぷりの出汁が出ること、さらに、栄養価が高いことも伝えています。
その他、生産者側だけでなく、消費者も巻き込んで広めたいということで、レシピコンテストを実施して、お料理を作っていただいたり、お料理は作らないまでも、SNSを利用し、「#(ハッシュタグ)を付け発信してほしい」とお願いをして、1,537もの投稿をしていただいたりと、皆で一丸となって取り組んでいます。
韓国への輸出が見込めない中、ほかの海外に打って出なければならないことなども含めて、「ほや」の普及活動ほどチームでの活動が向いているものはないと考えているそう。さらに、普段関わらない業種の方からの意見が聞けたことで、別の視点から「ほや」を見ると、実は宝の山だったという発見もあり、今後もさまざまなメーカーさんと連携しながら、価値を変えていくことにチャレンジしていきたいとのことでした。

ほやのイメチェン!プロジェクト概要
ほやのイメチェン!プロジェクト概要

まとめ
株式会社電通 グロース事業開発部 ディレクター 金井 毅 氏

なぜいま、アメリカに産業がたくさんできて、ドイツや日本にはできないのか。

それは、職人気質が影を落としているからで、クラフトマンシップには、よい部分もたくさんあるが、リスクテイクできないのが弱点となります。
今の時代、猛烈なスピードで様々なものが動いているので、満を持すのではなく、ちょっとした商品開発、販売開発を行って、少しずつでも動くことが必要。動きながら世の中に出してみて、市場からフィードバックをもらい、改良しながら、徐々によいものにしていく。こういったスピード感と臨機応変な対応が必要だとのこと。

金井 毅 氏
金井 毅 氏

関係する人たちがうまくネットワークしながらビジネスを構築して、私の大好きな三陸というエリアの商材を日本全国にアピールしてほしいとのことでした。

セミナーレポート⑦ 「バイヤーからの視点~アジア・オセアニア市場への販路拡大の秘訣~

(現地における認証のとらえ方)パネルディスカッション」

本パネルディスカッションでは、アジア・オセアニア市場での販路拡大に取り組もうとする中小事業者にとって、何に留意し、どう戦略を立てれば良いのか、実際にビジネスを展開するバイヤーの視点からアドバイスをいただくことで、海外市場開拓の秘訣を探ります。

司会独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)
青森貿易情報センター所長
木村 慶一
独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)青森貿易情報センター所長 木村 慶一 氏

農林水産物・食品の輸出額の推移を見ますと、2018年は9,068億円で、これは統計を取り始めてから最高の額です。また、日本全体の農水産輸出は3分の1が水産品で、その4分の1程は水産調整品となり、2017年から18年までの間に約10%増となっています。
農水産物・食品の輸出額の国・地域別内訳は、香港、中国、アメリカ、この3国で輸出のほぼ半分を占めています。水産品では、香港、中国、アメリカ、その後に、タイとベトナムが続き、香港が順調に伸びています。東北の水産物の輸出動向はというと、2017年に震災前の水産物輸出水準を震災後、初めて金額で超え、順調な推移を見せています。

上記のことをふまえ、各国のバイヤーの立場から下記の質問にお答えいただきます。

①現在の海外各国における水産物の消費動向および現地での日本産水産物の流通状況
②日本産水産物の輸入に関するバイヤーの立場からの課題、および輸出する側に対する要望
③日本産水産物のさらなる輸出拡大に向けてのアドバイス等

【パネリスト】
  • Pyrmont Seafood(オーストラリア) General Manager 石井 誠人 氏
  • SENDO ICHI SEAFOOD (M) SDN BHD(マレーシア) General Manager Yaw Yen Loong 氏
  • TINH HOA TOAN CAU FOOD JOINT STOCK COMPANY(ベトナム) 輸入担当 Vũ Bảo Châu 氏

オーストラリア
Pyrmont Seafood General Manager 石井 誠人 氏

①オーストラリアは、輸入規制が厳しく、日本からは生の魚を輸入できないのが現状です。多民族国家のため、それぞれに好みの調理法がありますが、「旨み」や「鰹のたたき」の「たたき」といった言葉は、メニューにもそのまま書かれています。オーストラリアでは、寿司も食べますが、彼らは家で魚を焼くということはしません。ですから、最近は、Uber eatsのような家庭宅配や、電子レンジで調理するだけの加工食品が流行しています。このように、調理されたものを好みますので、完成の一歩手前まで加工されたものが出てくれば、広がる可能性があると思います。

石井 誠人 氏
石井 誠人 氏

②オーストラリアと日本の市場とで、ニーズの差はそれほど大きくはないと思います。ただ、オーストラリアは規制が多く、「このような商品がほしい」と話すことができないのですが、私が個人的にほしいと思うのは、東北の皆さんが持っている技術です。例えばパッケージ方法などを、オーストラリアに来て教えていただきたいと思います。オーストラリアは海産物が豊富なのですが、まだまだ処理の仕方やパッキング、トレーサビリティなどが整備されていないからです。

③まずは現地に来て、実際のスーパー等の市場を見る必要があると思います。そして、現地の人間と一緒に試食販売等を行い、その国に合った物を作り、提供していくことが重要です。また、日本をより知ってもらうためにも、オーストラリアの有名シェフや、フードブロガーといった方々を東北に連れてきて、彼らに、どんな水産物がどのように生産され、加工されているのかを見せていただきたいと思います。ここに来る前、漁師コミュニティというfacebookを見つけて、漁師や生産者の方々が会話しているのを見ました。いまはSNSの時代ですので、こういったものを使って、関係者が繫がっていくのも良いのではないでしょうか。

マレーシア
SENDO ICHI SEAFOOD (M) SDN BHD General Manager Yaw Yen Loong 氏

①マレーシアにおいて輸入の水産品で人気なのは、サーモン、マス、マグロで、日本からの水産物は質が高く、新鮮なことで有名です。
マレーシアにはいろいろな国の人が暮らしており、イスラム系の人、中国人も多いです。若い世代は、日本のシーフードでも刺身が大好きなので、日本産の食品のターゲットにふさわしいと思います。また、都市部に住む中国人の中間層、高所得者層もターゲットの中心になると思います。
イスラム系のマレーシア人は、人口の約6割を占めており、大きなマーケットといえると思います。今後、非常に大きな可能性があると言えます。

Yaw Yen Loong 氏
Yaw Yen Loong 氏

②最近マレーシア人が日本に旅行する機会が増えており、日本食の知識もだんだん豊富になってきました。日本食のレストランも2年ほど前から増えています。マレーシアでは店を開店する際の規制が少ないので、需要は高くなっていると思います。私の会社では、鮮魚と冷凍、両方人気です。鮮魚は高級レストラン、冷凍物に関してはスーパー・大衆向けのレストランに需要があります。加工品はハラル認証を受けるためにも、マレーシアで加工するのが良いと思います。

③要望としては、日本のシーフードに対する情報を収集しやすくしてほしいと思います。私たちが日本の水産物に関する情報をインターネットで見ようとすると、ほとんどが日本語で書いてあるので、分かりづらいのです。

④規制に関しては、一般的には日本からの輸出に関して厳しい規制はないと思います。一点申し上げるとすれば、活魚に対してはライセンスを取らなければならず、ここは課題になってくると思います。認証に関して考えていただきたいのはHACCPやISOなどですが、まずはシーフードに関する啓蒙活動、それから研究開発に関しても、できることがあるのではないかと思います。例えば、シーズンオフがある水産物を通年で供給できるような方法を考えてみると良いのではないでしょうか。

ベトナム
TINH HOA TOAN CAU FOOD JOINT STOCK COMPANY 輸入担当 Vũ Bảo Châu 氏

①日本の海産物の需要は大変高まっています。日本レストランもたくさんあり、日本の海産物の知識も持っています。輸入の食材をよく食べるのは、中間層、高所得者層です。それは、彼らが栄養価の高いものを求めているからというのが一つの要因です。原料そのものを輸入する場合は、冷凍の形で輸入した方が良いと思います。加工品について、他の国からも入っておりますので、価格は安い方が需要があるでしょう。加工品は、日本で加工して味つけもするのが良いと思いますが、ベトナムの調味料を使う等の工夫をすれば、より現地に受け入れられやすくなるのではないでしょうか。

Vũ Bảo Châu 氏
Vũ Bảo Châu 氏

②バイヤーの立場から見ますと、日本の水産品の輸入の課題として、ベトナムはマレーシアとは違い、厳しい規制があることです。例えば、食品や施設を登録しなければならないとか、品質の検査や安全衛生食品の証明書の申請が必要になります。

③日本から輸出する場合、こちらがオーダーした数量を安定的に確保できるかがカギになると思います。お願いしたものが足りないということになると、信用問題になりかねません。その点を明確にしていただく必要があります。また、日本国内で何かの賞などを受賞した経歴があれば、ぜひ、それが分かるような表示をしていただきたいです。それがアピールポイントになると思います。

「東北復興水産加工品展示商談会2019」の詳細内容は下記のボタンをクリック!

※レポートの内容および登場者の所属・役職等は記事公開当時のものです。