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セミナーレポート「これからの販路とマーケティング」

セミナーレポート
「これからの販路とマーケティング」

令和3年9月16日、「これからの販路とマーケティング」と題して、オンラインセミナーが開催されました。

講師
株式会社豊洲漁商産直市場 取締役 兼 株式会社エーピーホールディングス
ブランド開発室 兼 オイシックス・ラ・大地株式会社
倉本 満隆

< 株式会社豊洲漁商産直市場とは >

株式会社エーピーホールディングスが展開する飲食店や、その他飲食店およびオイシックス・ラ・大地が持つECサイトへの鮮魚・水産加工品の卸売をしています。
特に、高品質な産直鮮魚を主に、よりお客様の視点に立ったものづくりや商品提案を進めております。

< 株式会社エーピーホールディングスとは >

独自のビジネスモデル「生販直結モデル」を掲げており、生産から加工、販売までを一貫して行っています。
販売については、関東圏をはじめとして、全国地方都市に専門性のある居酒屋を中心とした飲食店を約200店舗展開しています。

< オイシックス・ラ・大地株式会社とは >

Oisix、大地を守る会、らでぃっしゅぼーやの3ブランドからなる食品EC事業を主に行っております。
当社のECは、毎週定期的にお届けをするサブスクリプション型の宅配モデルです。
企業理念として、「これからの食卓、これからの畑」と定め、食に関する社会課題をビジネスの手法で解決することをミッションとし、お客様のニーズに合わせて内容の異なる様々なコースを用意しており、会員数は年々増加しています。
ビジネスモデルは、株式会社エーピーホールディングスと似ていて、生産者から直接仕入れた食材を自社工場で加工し、定期宅配までを一貫して行っています。

<マーケティングとは>

まず、マーケティングとは、「顧客が真に求める商品やサービスを作り、その情報を届け、顧客がその商品を効果的に得られるようにする活動」の全てを表す概念であると定義されています。
「概念」なので、何かを作ればいいだとかそういうことではなく、難しいところですが、簡単にご説明すると「世の中のニーズをつかむ」活動と「世の中に売り物を訴求する」活動の2つがあります。

マーケティング
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「世の中のニーズをつかむ」活動 と 「世の中に売り物を訴求する」活動

< マーケットインとプロダクトアウト >

プロダクトアウトとは、「会社の方針や作りたいもの、作れるものを基準に商品開発を行うこと」を指します。要するに、商品を作ってから、どのように売っていくかを考えていくスタイルのことです。
マーケットインとは、プロダクトアウトとは反対に「顧客の意見・ニーズを汲みとって製品開発を行うこと」を指します。
プロダクトアウトとマーケットインには、根底には必ずユーザーニーズが存在しています。それが見えているか見えていないかの違いで、「マーケットインは顕在化した顧客のニーズに、プロダクトアウトは潜在的な顧客のニーズに対してアプローチするもの」という二つの視点があります。
現在は、昔のように物を作れば売れる時代ではなくなり、情報が増え、競合と簡単に比較されてしまうような時代になりました。

そのため、「プロダクトアウト」はリスクの大きい考え方であり、いかに「マーケットイン」の概念に基づいて顧客の満足度を高められるかを重視すべきという風潮が強まっています。
しかしながら、プロダクトアウトは悪いかというと、決してそんなことはありません。
潜在的な顧客のニーズに対してアプローチする方法である、プロダクトアウトの代表的な企業としては、SONYやAppleなどが挙げられます。これら企業の製品は、ユーザーに意見を聞いても作れるものではありませんが、ニーズにマッチした商品作りが出来ています。

このように、「プロダクトアウト」と「マーケットイン」という考えがある中で、弊社において、どのようにニーズをつかむかというと、EC通販事業をメインとしている弊社の親会社であるオイシックス・ラ・大地では、徹底的なアンケートを実施しマーケットの意見を取り入れるようにしています。また、外食産業をメインとしているエーピーホールディングスでは、直接お客様のご意見をお聞きし、マーケットの意見を取り入れるようにしています。
これは、次のような失敗例があったからです。

< プロダクトアウトの失敗例 >

マーケティングにおいて最も重要なのは「顧客」です。
例として、エーピーホールディングスが展開している海鮮居酒屋「四十八漁場」でのプロダクトアウトの失敗例を紹介します。
「四十八漁場」には、宮崎で朝獲った魚が夕方には東京に届く「今朝獲れ」や「漁師直結」で新鮮な魚介類の仕入れなどの強みがあり、伝えたいのは鮮度感や生産者の想いでした。しかし、「四十八漁場」をネット検索すると、出てくるのは浴衣姿の従業員の女の子ばかりで、強みがお客様に全く届いていませんでした。そこで、お客様に実際に魚を見せたり、従業員の浴衣のトーンを落としたり、魚の価値を従業員にしっかり伝え、お客様に共有してもらうなどを行うことで、売上が改善し、ネット検索の結果も魚の写真が上がってくるようになりました。

<商品開発をする前に>

同じ業態でも、ターゲットの違いでニーズが大きく異なります。
例として、オイシックス・ラ・大地で行っている宅配通販事業に「Oisix」と「大地を守る会」という異なるブランドがあります。
「Oisix」のターゲットは、子供が小さい共働き世代、「大地を守る会」のターゲットは、2人暮らしのシニア世代です。どちらも家庭向けの通販ですが、下記のようなニーズの違いがあります。

なので、商品開発をする前には、まずターゲティング(どの顧客向けなのか)をしっかりと決め、それからマーケティング(どう効果的にお届けしていくか)、最後にブランディング(長く売れるための仕組みづくり)という順番を意識することが重要です。

< 企業が気づいていない価値を掘り起こす >

それぞれの企業に、いろいろな強みがあると思います。しかし、実は企業が気づいていないところに大きい価値があったりします。
例えば、「ガンガゼ」というウニは、食べてもおいしくないし、磯焼けの原因になるとも言われていて、一見、強みや価値はないように見えます。
しかし、ウニにキャベツやほうれん草を食べさせて身入れをよくする実験が進んでおり、ウニがおいしくなったという事例が出てきています。
また、通常廃棄してしまう魚の頭や骨は、じっくり炊くととても美味しいあら汁になります。ゴミだと思っているものも、新鮮であれば価値があるということです。
このように、「これしかできない」と思わずに、視点を変えていただくと新しい価値が生まれるのではないかと思っています。

< 顧客(消費者)の本能を理解する >

マーケターとしてこのような思考を持つためには、顧客の本能を理解するということが非常に重要です。今何が流行っていて、消費者たちは何を考えているのか、ということを知ることがとても大事です。
そのためには、流行りの「Instagram」、「TikTok」などのSNSや、「ワンピース」、「鬼滅の刃」のような漫画をチェックしたり、自社製品や他社製品を食べている消費者は今何を考えているのか、なぜそれを買ったのかということを洞察し、消費者になりきればなりきるほど、消費者の潜在的なニーズが見えてきます。
みなさんもそうだと思いますが、人はほとんど無意識で生きています。人の意識的な行動は約1割しかないと言われており、のこりの9割はほぼ無意識に行っているといえます。
言葉にならない無意識の中にいかに入り込めるかということが、非常に大切なポイントです。
そして、その無意識を言語化し、「こういう商品ならこういうところに受けるのでは」「こういう商品は他にないけれど消費者は求めている」というような仮説を立てることが大事です。それを繰り返して、消費者が何をしたら喜ぶかを徹底的に考えることが、売れる商品作りに繋がります。

< まとめ >

このコロナ禍で、外食産業は以前の7~8割しか元に戻らないと言われています。
しかしながら、消費者の数は変わりませんので、これからは食べ方や食べるシチュエーションが変わっていきます。そのため、今後水産加工業においては、商品開発力ももちろんですが、協業も含めて工場の柔軟性も求められるようになります。
また、水産の商品は、プロダクトアウト商品がとても多いと思っています。今回のセミナーを機に、視点の変化も受け入れ、ターゲット顧客がどのような商品を欲ししているのかを考え、もう一度商品を見直してみてはいかがでしょうか。

※セミナーの内容および講師の所属・役職等は記事公開当時のものです。