令和7年2月7日、仙台市の「仙台国際センター」において、「メディアから取材が殺到する繁盛店を経営するオーナーに聞く 今求められる“魚”と“条件”」と題したセミナーが開催されました。 様々な業態を展開するLAUGH GROUPから見た、飲食店に販路開拓するためのコツとポイントについて、具体的な事例を交えながらお話しいただきました。
LAUGH GROUPでは、養殖、製造加工、卸売(納屋)、小売、飲食と、水産業を軸とした様々な業態を展開しております。 きっかけとなったのは、某大手家具メーカーに勤務していた時のこと、通常は4万円で販売されている羽毛布団を1万円以下で販売できる、サプライヤーマネジメント(製造〜販売までを一気通貫で手掛ける)というビジネスモデルを見て、これを食・水産にも応用できないものかと考えた末に独立し、まずは川下(飲食)からスタートして、徐々に川上(卸売→製造→養殖)まで事業を拡げて、現在に至っています。 なかでも飲食店は、エンドユーザーに料理を通して川上の背景を伝えることができるセールスプロモーションとして絶好の場と考えています。よって当社では、飲食店=メディア(媒体)と位置付けております。 当社では「笑顔の食卓を未来につなぐ」をミッションとし、海資源の枯渇化、人手不足(担い手不足)といった水産業界を取り巻く課題解決に向けて、①魚種対応(料理人として現在獲れている魚種に対応すること、対応し続けること)、②付加価値作り(料理人として商品に付加価値を与え、利益率の高い商品を漁師と一緒に作っていくこと)、③境界線融かし(様々な人・業界を繫ぐことで、魚の新しい商品・サービスを生み出すこと)、この3点を柱として、ミッション達成を目指しております。
なんとなくを排除する 当たり前のことですが、A〜Zの商品を扱っている飲食店よりも、このお店の売りが何なのか、何が美味しいのかがはっきりとした飲食店の方が繁盛します。 一般的に、飲食店の集客は、SNS、WEBサイト、看板等の店外ツールが利用されていますが、実際に注文される商品の約8割は、メニュー表やスタッフのオススメ等の店内ツールで意思決定するとされており、ほとんどの売上は店内で構成されています。 このため、飲食店に対してなんとなく商品を売るのではなく、飲食店スタッフがお客様におすすめしたくなる商品を提案すること、飲食店がその商品を売りたくなるような仕掛けを作ることこそが重要と言えます。 この原理原則を理解したうえで、提案商品が売りやすい商品か、魅力的な商品か、ここにしかない商品か、価格ではなく付加価値を提供できているか、これらを突き詰めていくことが最も重要なポイントです。
他社にないニッチな差別化商品を提供 飲食店が商品を採用するのに重要なのは、利益率と差別化商品です。よって低利用魚・未利用魚の提案は非常に有効です。ただ飲食店の料理人は調理の技術こそあるものの、魚のことは意外と知らないので、低利用魚・未利用魚をそのまま売るだけでは継続的な発注は期待できません。当社では調理方法を料理人と一緒に考え、価値のある低利用魚・未利用魚でしっかりと利益を確保しています。
(低利用魚・未利用魚の商品開発事例)
商品のストーリー(背景)を提供 どの商品にも当然ストーリーが存在しますが、そこまでの情報を提供している納屋はそうありません。当社は特にニッチな商品を提供しているので、接客する人が接客しやすいツールの活用を重要視しています。 一例ですが、ホタテ漁師が飲食店をジャックしたら面白いのではという発想から、漁師自らが調理と配膳をするホタテフェアを開催しました。これにより、スタッフが漁師と直に接することで商品の背景や漁師の思いを知る機会となっただけでなく、来店客に漁師と産地の存在を広く認知していただくことに繋がりました。 それから商品のストーリーは言葉では伝わりにくいため、画像や映像を活用するのが効果的です。漁師は船の画像や映像を以外と持っているもので、それを無償で宣伝用やスタッフ育成用に提供することで、顧客の離反防止、顧客の新規紹介に繋げることができました。こういった小まめな対応まで行う納屋は意外と少ないのが現状です。 (これは特殊な事例ですが)漁業はいわゆる清潔感からかけ離れたイメージがありますが、これから若い世代を取り込むには、色々なものをブランディングしていく必要があります。さらに海洋環境問題を広い世代にも知っていただくべく、海から食用魚がいなくなる「2048年問題」をモチーフにしたかっこいいアパレル(服)をオリジナルで制作し、自社はもちろん、取引先、漁師、一般のお客様に原価で販売して、宣伝活動はもちろんのこと、海洋環境問題の啓蒙活動にも繋げています。
店舗以外の売り上げを作る仕掛けを提供 私自身、飲食店を店内飲食だけで売り上げを成り立たせるという常識に疑問を抱いています。飲食店は一般家庭の食卓と違い、毎日利用してもらえることはできません。さらに利用者の年齢も限定されます。そこで取引先の飲食店に対して、店内飲食以外でも売り上げを生み出す仕組みの提供を始めました。それがネットショップです。当社はネットショップの仕組み(システム)を安価で提供するだけで、ネットショップの運営は飲食店が独自で行います。利用者側は店舗で美味しいと感じた商品を手軽に購入でき、飲食店側は購買設定を多様化させることができます。このように付属するサービス・ノウハウの提供にも取り組むことで、離反防止に繋げています。
当社の納屋としての付加価値は、①ここでしか食べられないもの、ここでしか体験できない商品開発を大切にすること、②小ロットでのOEMも対応すること、③飲食店という立場から店舗での調理工程を低減させる商品を提案すること、④あらゆる企画で商品の背景を伝えることを重要視していることで、こうした積み重ねによって、顧客の離反・批判が一切ありません。 企業として特に心掛けていることは、「なんでもやる」という概念を捨てて、競争相手の多いレッドゾーンや価格競争は避けつつ、やれないことではなく、やれることだけを深掘りするようにしています。 飲食店の立場から見た販路拡大のポイントは、まず自分達にしかない強みを見つけることです。そして、トレーサビリティやサステナビリティが特に若い世代で関心が高まっていますが、このような商品の背景をしっかり伝えるためには、ストーリーが伝わるツールや仕掛けを有効活用して、飲食店がエンドユーザーに商品を売りやすくなるよう誘導してあげることが、製造や納屋の役割ではないかと考えています。 こうした活動が、水産に携わる職業の価値を計り知れないものとすることができ、ひいてはこれからの時代を担う若い世代にも繋げていくことができるのではと考えています。